2015 Fiscal Year Annual Research Report
無電解ニッケルめっき廃液からのニッケル回収のための磁気分離技術の研究
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15H03550
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
岡 徹雄 新潟大学, 自然科学系, 教授 (40432091)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
横山 和哉 足利工業大学, 工学部, 教授 (60313558)
小川 純 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (60377182)
福井 聡 新潟大学, 自然科学系, 教授 (70293199)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 超伝導体 / 磁場 / 無電解ニッケルめっき / 資源回収 / 磁気分離 / 希少金属 |
Outline of Annual Research Achievements |
複雑な形状の製品にも均一に被膜でき耐食性や硬度に優れることから、無電解ニッケル(Ni)めっき法は多くの産業に利用されてきた。使用済みのめっき廃液の処理は環境負荷や工程コストに影響し、希少金属であるNiの廃棄には資源保全の観点からも現プロセスの改善が望まれる。巨大な需要のなかで、工程内でおこる異常な成膜やめっき速度の低下の際には、めっき液の老化が起因として液は交換され大量の廃液が生じている。廃棄されるNi資源の回収は大きな課題である。本研究では、めっき廃水の排水浄化工程を利用した硫酸Niの生成を検討した。硫酸Niはめっき浴の主原料であり、これを連続生成すれば原材料の有効利用とめっき液の長寿命化に極めて有効である。数ターンのめっき処理で生成する不要な亜リン酸イオンを除去するため、Niを反応させて得る亜リン酸Niを硫酸で処理して硫酸Niを生成しこれを磁場で分離回収する。硫酸Niの体積あたりの帯磁率は3.33×10-4と小さく、常磁性のAlと同程度である。亜リン酸Niから硫酸Niが部分的に晶出した混合試料を、3Tのバルク磁石を用いた開勾配型で磁気分離したところ、磁極に吸着した沈殿中のPとNiの存在比に、Niの増加とPの減少を示唆するデータが得られ、種々具体的な実験の結果、一日に8kgの硫酸Niの結晶を回収できることが分かった。濃縮された硫酸Ni結晶は再び亜リン酸Ni反応槽に戻してリサイクルが完成するが、所定の精製をしてめっきの原材料としても利用できる。Niをイオンや化合物として含む材料がもつ磁性については産業応用として未発達であり、原子磁化をもつNi元素の分離回収に応用された例は見当たらない。コンパクトな強磁場を使うことによって、電解、無電解に限らず、Niめっき工程のあらゆる段階で新たな処理方法が提案可能である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
リサイクル前工程での硫酸ニッケル沈殿の合成を行ってその物性把握を行ない、基礎的な磁気分離実験とその性能評価を行なった。その結果に応じて磁気分離装置を作成して整備改良を実施した。分離に関する工程を確立した。硫酸ニッケルの回収に関し、長い処理時間と結晶の不安定性、処理液体がpH1の強酸性であるなどのため、不可能であった連続再生処理を可能とする目途が立った。硫酸ニッケルと亜リン酸ニッケルとの磁性の差を利用し、超伝導バルク磁石などの強磁場を使って分離回収する技術に世界で初めて成功した。このことによって初めてニッケルのリサイクルが可能となった。このリサイクル前工程において、硫酸ニッケル沈殿の合成をねらって粗大結晶の析出条件の把握を実施して、粒径や析出形態、純度の評価を行って結晶の物性把握を行なった。再生液と呼ぶ混合液からの硫酸ニッケル粗大結晶の合成条件を把握できた。磁気分離実験と性能評価においては、新たな磁場発生装置の整備を完了して、3Tの磁場を定常的に発生させることに成功した。また分離槽の設計製作を完成して磁気分離装置の整備を行った。技術展開と市場性の検討に関しては、愛知技研との協働関係を確立して情報交換を実施しながら技術連携と協力関係を構築することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、硫酸ニッケルの生成条件の検討によりリサイクル材料の物性検討を行う。また、硫酸ニッケルの粒度や磁化率などの物性評価を行って、分離すべき粗大な分離結晶の最適化を検討する。この結晶を磁場発生装置を用いて分離して性能評価を行い、回収性能の試験評価を併せて磁気分離実証実験を行う。このためには、資源リサイクルとめっき液の長寿命化を目的に特許化した技術をベースとした高性能な磁気分離装置を実用化する必要がある。新たな強磁場による磁気分離率を評価し、磁気分離流速と処理量の検討を行う。具体的には、分離水槽、配管、消耗性配管材料、添加材、薬剤を用い、磁場印加3Tの発生磁場を使って達成する。処理量に関しては、実用化調査活動の中で有効な最小限の処理量の比較検討を行ってその実用性を確認する。実験研究の成果を国内外での成果公表の機会を得て行い、同時に共同研究企業を含む技術連携可能な企業や自治体などの調査を行って、技術全体の有効性を評価する。具体的には、めっき液供給業界(1社)、めっき加工業界(1社)、めっき品購入に関わる機械・電気業界(1社)、資源再生業界(1社)のそれぞれから1社以上の合計4社による一連の共同実施体の構築を目指す。
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Research Products
(4 results)