2016 Fiscal Year Annual Research Report
光渦励起パラメトリックレーザーに立脚するトポロジカル非線形光学
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15H03571
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
尾松 孝茂 千葉大学, 大学院融合科学研究科, 教授 (30241938)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | レーザー / 非線形光学 / 光渦 |
Outline of Annual Research Achievements |
円筒座標系の周期的境界条件に由来する量子数(トポロジカルチャージ)は光渦の軌道角運動量を決定する基本パラメーターである。本研究では、光渦励起パラメトリック発振において、①「通常の量子論ではありえない非整数のトポロジカルチャージを持つ光渦がなぜ発振するのか?」②「整数のトポロジカルチャージを持つ光渦が発生する条件は何か?」③「シグナル光波長が励起光波長に近づいた場合にフォノンポラリトンへトポロジカルチャージが分配できるのか?」を解明する。 「励起光のトポロジカルチャージが2つの光(シグナル・アイドラー)にどのように分配されるのか?」未だ大きな謎である。本研究はトポロジカルチャージ分配則で決まる光の軌道角運動量の本質を解明する。また、フォノンポラリトンへトポロジカルチャージを分配することで波面変調技術が確立されていない中赤外~テラヘルツ波帯の光渦を自在に発生する。 本年度は、励起光スペクトル線幅、非線形パラメトリック利得、共振器フレネル数をパラメーターにして、励起光のトポロジカルチャージがシグナル光、あるいは、アイドラー光へ転写する条件を実験的に解明した。その結果、0.6~2.6umの3オクターブを超える波長可変幅を有する光渦パラメトリックレーザーを開発するとともに、シグナル光、アイドラー光の波長が縮退する近傍の領域で、非整数のトポロジカルチャージを持つ光渦が発生することを観測した。さらに、6-18um帯波長可変中赤外光渦発生にも成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究では、光パラメトリック発振におけるトポロジカルチャージ分配則を体系づける統一的研究「トポロジカル非線形光学」を確立した。また、波面変調素子が乏しい中赤外域(6-18um)でミリジュールに迫る実用性の高い光渦光源の開発に成功した。 これらの光源開発技術を用いて、新奇物質科学カイラル・フォトニクス(生体分子のカイラル構造体・高分子結晶の構造的カイラリティー制御・超解像テラヘルツ顕微分光)への展開が可能になる。
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Strategy for Future Research Activity |
励起光であるナノ秒グリーンレーザーをスペクトル狭窄化する。その結果、シグナル光・アイドラー光の発振スペクトル狭窄化が起こり、光渦モード間のコヒーレント状態が効率よく生成できる。また、空間変調器で励起光波面を変調し、高次光渦(トポロジカルチャージ≧2)を励起光に用いる。その結果、許容される光渦モードの次数、コヒーレント状態が多様になり、トポロジカルチャージ分配則がより明確になる。 また、広帯域なピコ秒グリーンレーザーを用いて、シンクロナス励起方式によって光渦パラメトリックレーザーを励起する。その結果、シグナル光・アイドラー光の発振スペクトルが広がり「光渦モード間のデコヒーレンス」を促進できる。フォノンポラリトンの緩和時間は室温下で<100psであるので、ピコ秒レーザーによるシンクロナス同期励起法が有効であると考えられる。さらに、フォノンポラリトンの緩和時間を長くするためLiNbO3結晶の積極的な冷却も行う。
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Research Products
(11 results)