2016 Fiscal Year Annual Research Report
Soft desorption and ionization for the mass spectrometry using intense THz pulses
Project/Area Number |
15H03579
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
永井 正也 大阪大学, 基礎工学研究科, 准教授 (30343239)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
冬木 正紀 畿央大学, 教育学部, 特任准教授 (40564787)
入澤 明典 大阪大学, 産業科学研究所, 助教 (90362756)
青木 順 大阪大学, 理学研究科, 助教 (90452424)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | テラヘルツ / 脱離イオン化 / 質量分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では高強度のピコ秒THzパルスを物質に照射することで生じた脱離イオン化が、大きな分子を壊すことなく高効率で脱離イオン化させられることを実証する。 前年度に陽イオンだけではなく陰イオンも検出できるように質量分析装置を設計変更し、それに従って本年度は実際に装置を組み上げた。そしてテラヘルツ自由電子レーザーを試料に入射し脱離イオン化させたイオン信号を飛行時間型質量分析法で測定した。交付申請書に記載の実施項目に沿って測定対象としてはUV光単独ではイオン化効率が低い糖を用いたが、テラヘルツ光照射下では強い陽イオン信号が観測された。ただし電子を含めた陰電荷信号は比較的信号強度が弱かった。また特定の周波数で励起すると大きな質量数をもった陽イオン信号が現れることも確認した。ただしテラヘルツ自由電子レーザーの特異なパルス構造が原因で脱離分子が壊れていることも実験結果から明らかになった。また非共鳴電子励起などこの過程と競合する現象がいくつかあることも発光測定から明らかにした。交付申請書に記載の実施項目2に沿ってこの非共鳴電子励起の寄与を明確にするため、半導体ZnO微粒子からの時間分解発光測定を行い、低周波数励起で強く現れることを確認した。このような質量分析のためのソフトな脱離イオン化過程を誘起させられるレーザーベースの高出力光源開発も交付申請書に記載の実施項目3に沿って合わせて行った。具体的には低温下におかれた誘電体や半導体結晶に高強度超短光パルスを照射することでテラヘルツ波発生効率の最適化を行った
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
27年度ではテラヘルツ光照射下で放出した陽イオンのみならず陰イオンを検出する必要が生じたことから、構築する質量分析装置の設計を大幅に変更した。装置完成が28年度に3か月程度ずれ込んだが、限られた自由電子レーザーのビームタイムの範囲内で順調に実験を行うことができた。そして当初予想しなかった強いイオン信号や提案するメカニズムを支持する実験結果が得られた。これらは異分野の研究者が集うことで初めて実現できる実験であることから国際的にも評価が高く、多くの招待講演を行った。ただしソフトな脱離イオン化の指標としての分子の断片化の抑制については明確な証拠が得られておらず、本研究課題の最終目標には到達できていない。これは励起光であるテラヘルツ自由電子レーザーの特異なパルス構造に起因するものと考えており、克服可能であると考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
29年度ではイオンレンズなど装置の改良を新たに加えて実験を行う予定である。また励起光であるテラヘルツ自由電子レーザーのパルス波形整形を行い単一ミクロパルス励起での飛行時間型質量分析および発光の時間分解測定を行うことで、ソフトな脱離イオン化の実証を行う計画である。
|
Research Products
(13 results)