2016 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15H03586
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
淡路 智 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (10222770)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
津田 理 東北大学, 工学研究科, 教授 (10267411)
宮城 大輔 東北大学, 工学研究科, 准教授 (10346413)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 高温超伝導 / 超伝導マグネット / 高電磁力 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,超伝導線材に補強を施すこれまでの手法とは異なり,コイル構造そのものに電磁力を支持させる新しい手法を用いて,50T 級超伝導マグネット開発を目指した次世代の高電磁力・高精度超伝導マグネット技術を確立することを目的とする。このため,申請者らが中部電力と共同で開発に成功した新しい補強構造について,熱応力・電磁応力下の変形挙動を解明する。先行研究では補強構造にFRPを使用していたが,構造材の強度を向上させるために,CFRPやSUSを検討した。その結果,CFRPは強度はあるが熱収縮が小さいため,補強としては十分でないことがわかり,SUSを採用することとした。さらに,補強構造がマグネットの空間電流密度を下げることから,特に問題となるコイル上部の円盤の厚みを,現実的な値まで下げることを検討した。結果として,外リングを5mm, 円盤厚みを0.5mmとしたコイルを作製し,電磁力試験を行った結果,その構造でも補強効果が十分に得られることが分かった。また,数値計算は熱ひずみや電磁力に対して,構造の詳細な部分の影響まで計算できるように解析コードを構築した。これによって,補強構造の電極やボルトの影響を計算できるようになった。実験では,電極近傍で補強効果の低減が観測されたが,これは,電極とボルトの取り合いのためであることが分かった。さらに,付随する効果として熱ひずみによる予ひずみがコイルに誘起できていることが,実験と計算の両面から分かってきた。 一方で,比較対象として高電磁力設計マグネットとして25T無冷媒超伝導マグネットの内挿コイルの実証試験を実施した。こちらは高電磁力設計を採用しているので,その試験結果を本研究にも反映させるため,電磁力試験結果から新しい補強方法を検討を行っている。 最終年度はこれらの結果をももとに,高電磁力設計を採用した実証コイルを作製し試験を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで熱ひずみの影響を考慮した解析モデルを構築し,超伝導コイルと補強構造の熱ひずみの違いによる効果を計算することができるようにした。その結果,適切な熱収縮率の材料を選択することで,コイルに予圧縮応力を熱ひずみによって与えることが可能となることが分かった。また,先行研究ではFRP製の補強構造を採用していたが,本研究ではより強度の高いSUS316Lを用いてコイルを作製した。これにより,約450A/mm2の大電流密度を大電磁力下で安定通電できることを実証した。このときの最大電磁力は補強なしで1200MPaを600MPaまで低減できることが分かった。さらに,補強構造を実際のマグネットに適用するため,コイル上部の円盤を0.5mmまで薄くした構造を採用して電磁力試験を行った。これは,パンケーキコイルを積層したマグネットでは,コイル上部円盤による空間電流密度の減少が問題となるからである。結果として,実用的な構造でも補強効果が得られることが分かった。一方で,数値計算と実験の組み合わせによって,補強構造を固定するためのボルトや電極の固定方法に課題があることも分かった。電磁力試験では,最大電磁力下において,コイルの一部で導体の限界のひずみが観測されたが,それでも超伝導特性の劣化が見られないことも分かった。れは,SUSを用いた場合の熱ひずみにより,予圧縮効果がコイル側に印加されていると考えられる。すなわち,導体のひずみ限界が熱ひずみによって向上する可能性があることも示唆される。この効果は,期待していたもので予圧縮によるひずみ特性の向上の他に,RE123テープで問題になっている剥離問題を解決する可能性も期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに得られた実験結果を,数値計算と組み合わせることで,最適な補強構造を採用した実際に使える補強コイルを作製し,これの電磁力・通電特性を実施する。コイルは,ダブルパンケーキ単体ではなく,数コイルを積層した構造を採用することで,将来の30T級超伝導コイルのモデルコイルとする。このため,得られた結果から30T無冷媒超伝導マグネットの設計し,補強構造のない場合との比較行う。
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Remarks |
東北大金研強磁場センター http://www.hflsm.imr.tohoku.ac.jp/
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Research Products
(4 results)