2017 Fiscal Year Annual Research Report
次世代自由電子レーザー用高輝度電子ビーム生成とマイクロバンチ不安定性抑制法の研究
Project/Area Number |
15H03594
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
西森 信行 東北大学, 多元物質科学研究所, 准教授 (60354908)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森 道昭 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 関西光科学研究所 光量子科学研究部, 主任研究員(定常) (10323271)
本田 洋介 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 加速器研究施設, 助教 (40509783)
宮島 司 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 加速器研究施設, 准教授 (50391769)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 自由電子レーザー / 高輝度電子源 / マイクロバンチ不安定性 |
Outline of Annual Research Achievements |
X線自由電子レーザー(FEL)開発過程で発見されたマイクロバンチ不安定性を研究する。次世代FEL用高輝度電子バンチを生成し、反転チャープ型バンチ圧縮器を用いた不安定性抑制方法の有効性を実証するのが目的である。平成29年度は次世代FEL用高輝度電子バンチ生成のため、①高電圧光陰極電子銃の500kV安定運転と②時間幅2ps、300pC以上の電子バンチ生成用レーザーシステム開発を実施した。
①高電圧光陰極電子銃は原子力機構で開発し、2012年に世界初の500kV電子ビーム生成後、KEKのコンパクトERL(cERL)に移設したものである。移設後に10段分割セラミック管の2段に不具合が生じ、500kV運転が困難となった。そこで、2段セラミック管増設による10段運転を企画した。H28年度までにcERLで500kV運転の目処をたてたが、ガリウムヒ素光陰極からの暗電流が発生したため、450kVでのビーム生成を余儀なくされた。H29年度はこの暗電流の原因を追究した。ガリウムヒ素光陰極は金属製ホルダーにインジウムで接着される。ホルダーをカソード電極に装着してビームを生成するが、装着が不十分だとホルダーと電極間に隙間が生じ、暗電流源となることを突き止めた。装着機構を調整して暗電流を5pA以下に抑制し、cERLで長時間の安定な500kVビーム生成試験に成功した。
②次世代FEL用300pCの電子バンチを量子効率1%の光陰極から生成するには、波長515nmのレーザーが0.07uJ程度必要である。レーザー波形整形でロスする分を考慮すると1uJ/パルス程度が必要となる。平成29年度までに、8uJ/パルスを波長1030nmで生成しパルス圧縮にも成功した。515 nmへの波長変換を行った結果、現時点では0.2uJ/パルスで変換効率が期待より悪い。次年度に原因を解明し、レーザー完成を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マイクロバンチ不安定性を研究するため、次世代FEL用高輝度電子バンチ生成が最初の目標である。そのための電子源として光陰極直流電子銃を開発している。高輝度低エミッタンス実現のための①電子銃高電圧化と、300pC大電荷電子バンチ生成のための②レーザー開発が必須開発項目である。
①H29年度は当初の計画通り、光陰極に起因する暗電流の原因解明とその抑制に取り組んだ。運転電圧500kVで光陰極からの暗電流を5pA以下に抑制することに成功した。H29年度末のcERL運転では、500kVビームを安定に2週間供給した。500kVビーム性能試験として、ソレノイドスキャンエミッタンス測定を行った。低電荷では目標の低エミッタンスビーム生成を確認したが、10pCを上回る電荷では、ソレノイド磁場を通過するときに多極磁場成分の影響が顕著になり、ビーム波形が四角に歪み、低エミッタンス性能が得られなかった。このビーム歪みの解決が今後の課題である。
②H29年度計画は、パルス幅2ps、300pC以上の電子バンチ生成可能なレーザーシステムを完成させ、KEKに移設することであった。レーザーパルスエネルギーの目標値は波長515nmで1uJである。そのために波長1030nmでレーザーパルスエネルギー10uJ程度を達成する必要がある。H29年度までに、レーザーの繰り返し周波数を減らすことでパルスエネルギーの増加を試み、波長1030nmで12.5kHz、100mW、8uJ /パルスの目標性能を達成した。パルス圧縮を行い、結晶で倍波生成を行ったが、現時点では波長515nmで0.2uJ生成に留まっている。原因を解明し、515nmで1uJ/パルス生成が今後の課題である。レーザーシステムの完成及び移設という当初の計画から遅れているが、①の成果を加えると、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
次世代FELに必要なバンチ電荷300pC、規格化エミッタンス1mm-mrad以下の高輝度電子バンチを生成することを目的とし、電子源開発に取り組む。H29年度までに実施してきた①電子源の高輝度化と②レーザー開発をさらに推進し完成させる。その後、③高バンチ電荷ビームを用いて反転チャープ型バンチ圧縮機を用いたマイクロバンチ不安定性の研究を行う。
①電子源の高電圧化技術は、H29年度までのcERL電子銃を用いた研究で終了し、目標の500kV安定運転技術を確立した。光陰極から発生する暗電流は5pA以下であり、運転に支障はない。500kV電子ビームのソレノイドスキャンエミッタンス測定では、10pCを越える電荷では原因不明の多極磁場成分のため、ビームが歪み四角形になることが判明した。H30年度は、原因を解明して、高バンチ電荷での低エミッタンス化(高輝度化)実現が課題である。 ②結晶倍波生成で目標の変換効率が得られていない原因を解明し、高バンチ電荷(300pC)用レーザーを完成する。KEKのERL用電子銃のレーザー室に移設し、高バンチ電荷ビームの生成試験を行う。 ③以上の電子源開発試験後、高バンチ電荷ビームを用いて、反転チャープ型バンチ圧縮機を用いたマイクロバンチ不安定性の研究をKEKコンパクトERLで行う。
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Research Products
(9 results)
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[Journal Article] Construction and commissioning of the compact energy-recovery linac at KEK2018
Author(s)
M. Akemoto, D. Arakawa, S. Asaoka, E. Cenni, M. Egi, K. Enami, K. Endo, S. Fukuda, T. Furuya, K. Haga, R. Hajima, K. Hara, K. Harada, T. Honda, Y. Honda, T. Honma, K. Hosoyama, E. Kako, T. Miyajima (31番目), N. Nishimori (39番目), 他
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Journal Title
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research Section A: Accelerators, Spectrometers, Detectors and Associated Equipment
Volume: 877
Pages: 197~219
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] 60 pC Bunch Charge Operation of the Compact ERL at KEK2017
Author(s)
T. Miyajima, Y. Honda, M. Shimada, R. Takai, T. Obina, K. Harada, M. Yamamoto, N. Nakamura, K. Umemori, E. Kako, T. Miura, R. Kato, T. Hotei, R. Nagai, R. Hajima, N. Nishimori
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Journal Title
Proceedings of the 8th International Particle Accelerator Conference (IPAC2017)
Volume: 1
Pages: 890~893
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[Presentation] Commission results of the compact ERL High voltage DC gun2017
Author(s)
N. Nishimori, M. Yamamoto, T. Miyajima, Y. Honda, T. Uchiyama, Xiuguang Jin, Takashi Obina, M. Mori, R. Nagai, R. Hajima, M. Kuriki
Organizer
The 59th ICFA Advanced Beam Dynamics Workshop on Energy Recovery Linacs
Int'l Joint Research / Invited
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[Presentation] 60 pC Bunch Charge Operation of the Compact ERL at KEK2017
Author(s)
T. Miyajima, Y. Honda, M. Shimada, R. Takai, T. Obina, K. Harada, M. Yamamoto, N. Nakamura, K. Umemori, E. Kako, T. Miura, R. Kato, T. Hotei, R. Nagai, R. Hajima, N. Nishimori
Organizer
The 8th International Particle Accelerator Conference (IPAC2017)
Int'l Joint Research
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