2015 Fiscal Year Annual Research Report
志村多様体,局所志村多様体とそのエタールコホモロジー
Project/Area Number |
15H03605
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
三枝 洋一 東京大学, 大学院数理科学研究科, 准教授 (70526962)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 志村多様体 / 局所志村多様体 / ラングランズ対応 / エタールコホモロジー / リジッド幾何 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はまず,PEL型とは限らない志村多様体のリジッド幾何学的な側面に関する研究を実施した.PEL型志村多様体の点は構造付きアーベル多様体と対応しているが,より一般の志村多様体の点も,ある種のモチーフによって記述できると期待されている.今年度は,前アーベル型と呼ばれるクラスに属する志村多様体に対し,潜在的良還元を持つモチーフに対応するべき部分集合である「潜在的良還元部分」の構成を行った.これは準コンパクトなリジッド開部分集合になる.志村多様体がPEL型の場合には,潜在的良還元部分は整モデルの特殊ファイバーに沿った完備化のリジッド一般ファイバーと一致することが分かる.さらに,潜在的良還元部分の補集合を適切な部分集合に分けることで,潜在的良還元部分のエタールコホモロジーと志村多様体全体のエタールコホモロジーが同じ超尖点部分を持つことが証明できた.この結果は,不分岐PEL型の場合には整モデルのトロイダルコンパクト化の理論を用いて既に証明済みであったが,リジッド幾何学的な視点に立つことで,整モデルやコンパクト化の理論に依存せずに大きく一般化できたところがポイントである.この研究は東京大学の今井直毅氏との共同研究である. 上記の研究と平行して局所志村多様体についての考察も行ったが,その過程において,無限レベルの局所志村多様体を扱う上での土台となるパーフェクトイド空間の理論について,さらに整備を行う必要性を感じた.そこで本年度の後半には,パーフェクトイド空間のエタールコホモロジーとその形式モデルの還元の関係について調査を行った.この研究は来年度も引き続いて行う予定である. 整数論サマースクールを開催し,多くの分野の専門家から志村多様体に関する情報収集を行った.得られた情報は,次年度以降の研究を進めていく上で重要な役割を果たす予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
志村多様体については,潜在的良還元部分の理論をほぼ完成させることができたという成果がある.また,整数論サマースクールを開催して効率的に情報を収集することができたことも計画通りの進捗である. 局所志村多様体の研究は,様々な技術的困難のため予定通りには進まなかったが,その過程において,土台となるパーフェクトイド空間の理論について,現状に加えて何を新たに証明するべきかを絞り込むことができたのは大きな収穫であった.
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Strategy for Future Research Activity |
まず,本年度に開始した,パーフェクトイド空間のエタールコホモロジーとその形式モデルの還元の関係についての基礎的研究を優先的に行う.リジッド空間の場合には形式隣接輪体の理論が存在するため,それを手本として,パーフェクトイド空間の形式モデルに対して形式隣接輪体を定義し,そのふるまいについての調査を行うことを計画している.形式隣接輪体の理論ができた後には,それを用いて局所志村多様体の交叉コホモロジーを適切に定義するという問題へと進む予定である. 今年度に発表されたCaraianiとScholzeの研究により,不分岐PEL型志村多様体に対するMantovan公式がパーフェクトイド空間の枠組みで解釈できることが明らかとなった.本研究計画にもこの新しい成果を利用できる可能性が高いと思われるため,必要な資料・情報を適宜入手しつつ,不分岐PEL型以外への一般化などを考察していきたいと考えている. 最終的には,これら2つの研究を統合して,交叉コホモロジーに対するMantovan公式を定式化・証明することが目標となる.
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Research Products
(1 results)