2015 Fiscal Year Annual Research Report
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15H03619
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
小島 定吉 東京工業大学, 情報理工学(系)研究科, 教授 (90117705)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤原 耕二 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (60229078)
逆井 卓也 東京大学, 数理(科)学研究科(研究院), 准教授 (60451902)
高澤 光彦 東京工業大学, 情報理工学(系)研究科, 助教 (80323822)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | トポロジー / 幾何学 / 実験数学 / 曲面 / 3次元多様体 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は,(1)曲面の写像類群の不変量(2)部分群の分離性(3)トポロジーにおける計算,という三つの大項目を課題として取り上げた. (1)に関して,グルノーブルの Greg McShane 氏と共同で,擬アノソフ写像類に対しては,正規化されたエントロピーと写像トーラスの体積の比が曲面のトポロジーによらない一定の定数で下から抑えられることを,擬フックス群の繰り込み体積を利用して証明した.加えて,主張の根拠がやや曖昧であった「擬アノソフ写像の両側反復で構成される擬フックス群列の極限の単位体積は写像トーラスの体積に収束する」という命題に,粗幾何の手法をもちいた証明を与え,論文を自己完結させて arXiv にアップロードした. (2)に関しては,大学院の講義のテーマに取り上げ,ワイズによるスペシャルキューブ複体の超平面が分離的であることの証明の詳細を確認し,その発展性を検討した. (3)に関しては,(1)に関連しエントロピーの拡張として,正則2次微分の空間上の Lp ノルムが誘導するターヒミュラー空間上の距離に関する,擬アノソフ写像類の作用の移動距離の計算というテーマを定式化した. これらの成果をえるために年間を通じて研究分担者・連携協力者・研究協力者との研究打ち合わせの実施し,さらに国際研究集会「Topology and Geometry of Low-Dmensional Manifolds(於奈良女子大学)」および「Topology and Computer 2006(於日本大学文理学部)」を開催した.また,10月より研究員を1名雇用しアルゴリズムの側面から研究を支援いただいた.この他,研究分担者による充実した研究実績もあるが,紙面の都合上ここでは省略する.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究のテーマである「曲面と3次元多様体が相互に絡むトポロジー」に則し,初年度である平成27年度は(1)曲面の写像類群の不変量(2)部分群の分離性(3)トポロジーにおける計算,の三つの大項目を課題として取り上げていた. (1)に関して,Greg McShane 氏と共に,曲面の擬アノソフ型自己同型の複雑さを定量化したエントロピーとその写像トーラスの双曲体積の間に明示的な関係を与えたことは,研究の理論的側面の進展としては十分実りの多いものであった.とくに「研究実績の概要」で記した擬フックス群列の体積の収束に関する懸念事項は,ほぼ同時に他の二つのグループによっても別証明が与えられ,さらにエントロピーと体積の関係という成果自体もいろいろな方面への新展開が幾つか続き,我々が取り組んでいた問題に対する近隣研究者の関心の高さを示す証左と受け止めている. (2)に関しては,部分群の分離性について新しい結果を得るには至っていないが,講義で取り上げたことによりワイズの議論に対する理解が深まり,今後いかに発展させるかを検討する段階まで進んだことを一つの進展と考えている. (3)に関しては直接の進展はなかったが,(1)の成果の副産物として,正則2次微分の空間の上の Lp ノルムが誘導するタイヒミュラー空間上の距離に関する擬アノソフ写像類の作用の移動距離の計算という魅力的なテーマが浮上してきたので,平成28年度の課題として大きく掲げたい. 以上のような状況から,研究はおおむね順調に進んでいると判断している.
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は,引き続き(1)曲面の写像類の不変量,(2)部分群の分離性,(3)トポロジーにおける計算,を本研究の三つの大項目を課題として設定し,平成27年度に得られた成果や蓄積をさらに進展させる.とくに(1)に関しては,タイヒミュラー空間の距離としてタイヒミュラー距離とヴェイユ・ピーターソン距離だけでなく,より一般に正則2次微分の空間上の Lp ノルムが誘導する距離に関して擬アノソフ写像類の作用の移動距離の理論的解析を試みる.この対象は,現時点では何もわかっていないと言っても過言ではなく,その解析をどこまで深めることができるかは全くの未知数だが,(3)の実験的手法とも絡めてまずは計算の取っ掛かりを手探りで探すことから始める予定である. また(2)については,平成27年度は新しい成果を得るには至っていなかったが十分な準備は整ったと考えており,とくに純粋に幾何学的群論の立場から分離性の有用性を見直し,空間と基本群の通約性を関連させた研究を展開する. このため,引き続き年間を通じて研究分担者・連携協力者・研究協力者と研究打ち合わせ,および関連研究集会の開催を実施する.とくに10月に秋田市において国際研究集会「Topology and Computer 2016」を開催する予定である.また,新たに複素双曲幾何の側面からの視点を加え,4月よりその方面に実績のある研究員1名を8ヶ月間雇用し研究を支援いただく.
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Research Products
(33 results)