2015 Fiscal Year Annual Research Report
ディリクレ形式が定める局所構造に基づく確率論および幾何学の展開
Project/Area Number |
15H03625
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
日野 正訓 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (40303888)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
桑江 一洋 福岡大学, 理学部, 教授 (80243814)
会田 茂樹 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (90222455)
熊谷 隆 京都大学, 数理解析研究所, 教授 (90234509)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 確率論 / ディリクレ形式 / 局所構造 / 幾何構造 / マルコフ過程 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者および研究分担者が主体となった研究に関して,本年度は以下の成果を得た. 日野は,一般の状態空間における強局所正則ディリクレ形式に付随する指数の決定問題に取り組み,適当な付加条件の下で指数がスペクトル次元で上から評価されることを証明した.これにより,指数の評価に関する以前からの予想が部分的に検証された.また,非対称双線型形式に付随する半群の短時間挙動の研究を行い,強局所対称ディリクレ形式に1階の摂動項が加わった場合に,積分型Varadhan評価が成り立つための十分条件を考察した.結果は更に改良できる見込みであるため,次年度も引き続き研究を行う.桑江は,ファイマン・カッツ汎関数の計測性の特徴づけについて条件の精密化を行った.また,対称マルコフ過程のレゾルヴェントフェラー性の変換による安定性についての研究成果を得た.熊谷は,時間依存する離散的なランダム媒質においては媒質の小さな摂動で離散時間マルコフ連鎖の長時間挙動が大きく変わり得ることを示した.これにより,時間依存しないランダム媒質との顕著な違いが明確になった.会田は,回転対称負曲率多様体上のループ空間で定義されたディリクレ形式のスペクトルギャップの漸近挙動について研究し,スペクトルギャップをパスのエネルギー関数のヘッシアンを用いて決定した. 得られた研究成果については,学会等で口頭発表を行い,更に学術誌へ論文を投稿済みまたは投稿準備中である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画に則った研究活動を行い,幾つかの課題について新たな知見が得られた.日野による指数の決定問題についてはまだ仮定が強い場合の結果しか得られていないものの,スペクトル次元との関係が一般の場合に成り立つだろうという予想を補強する研究である.また,非対称形式に付随する半群の短時間挙動の研究については,当初予想していたよりも状況が簡明でないことがわかり,引き続き詳しく研究する意義があることが判明した.桑江による研究はディリクレ形式の基礎理論に関するもので,本研究課題を推進するに当たり有用な結果が得られたと考えられる.熊谷による研究は,時間依存のランダム媒質において状況が質的に異なることを示した顕著な成果である.会田による研究は,無限次元空間における確率解析の研究において新たな知見をもたらした意義のある成果であると考えられる.以上のように,おおむね順調に研究が進展しているものと判断される.
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Strategy for Future Research Activity |
研究集会などと通じて研究分担者・連携研究者が直接議論する機会を積極的に持つことにより,研究連絡を密に行うことを意識しながら研究を進めるものとする.諸外国での研究動向にも注目し,当初想定しなかった展開があれば,本研究の方向性について柔軟な対応をとることで,研究遂行に支障をきたさないよう努める.
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Research Products
(14 results)