2015 Fiscal Year Annual Research Report
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15H03637
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
渡部 善隆 九州大学, 情報基盤研究開発センター, 准教授 (90243972)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木下 武彦 京都大学, 健康長寿社会の総合医療開発ユニット, 特定講師 (30546429)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 関数方程式 / 非線形偏微分方程式 / 計算機援用証明 / 精度保証付き数値計算 / 不動点定理 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は,非線形偏微分方程式に代表される関数方程式の解に対する計算機援用証明の適用範囲を格段に広げることを目的とします. 平成27年度の成果として,申請者らがこれまでの研究で得た知見である,一般的な関数空間における無限次元線形作用素の可逆性の検証と逆作用素の精度保証付きノルム評価方法を基盤とし,非線形偏微分方程式の解の存在と局所一意性を計算機内で自動的に検証する数値的手法を与えることに成功しました.この手法は,何らかの方法で得られた関数方程式の近似解の周りで方程式を線形化し,線形化作用素の可逆性と逆作用素ノルム評価をもとにした無限次元Newton法に帰着させるものであり,変分原理に基づく弱形式化と適切な基底関数の選択によって,提案する無限次元Newton法が従来の手法に比べ高精度かつ低コストで解の検証を実現できることを,いくつかの検証例により確認することができました. 一方,無限次元Newton法に基づく手順の基幹となる線形化作用素の可逆性の確認と有限次元作用素による一様近似は,有限次元行列に対するスペクトルノルム評価に帰着されることが確認されています.特に偏微分作用素をGalerkin近似により離散化して得られる行列の多くは大規模かつスパース構造を持ち,一般にHermite性・正定値性は保証されません.また,疎行列の構造を保ったままでのスペクトルノルムの精度保証計算は現状では限界があり,計算コストの面で課題があります.この難点を克服するため,解を包み込むことが期待される有限次元の集合部分を区間と基底関数で表現する解の検証手法(区間Newton法)について探求し,具体的な問題に対して無限次元Newton法より優れた解の検証結果を与えることを示しました.
以上の研究成果は,平成28年度以降も引き続き拡張・改良を重ねるべき課題であり,それらの検討は継続して実施します.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度は,助成事業のおかげで,共同研究者・連携研究者・海外共同研究者が全員参加し,しかもテーマを深く掘り下げた議論の場を設定することができました.そのため,今後の研究の方向性と克服すべき課題と解決方法に至る道筋などを共有することができました.さらに,研究者相互の議論を通して,関数方程式の解に対する無限次元Newton法による包み込み理論の構築が大きく進展するとともに,「ノルム」という,ひとつの尺度に落とし込むだけでない,多様なパラメータを活用することによる解決方法も問題によっては有効であるということも明らかになりました.これらの知見を基に,具体的な非線形楕円型方程式の境界値問題に対する解の存在検証理論の有効性とその代替となることが期待される手法を構築し,具体的な検証例を得ることに成功しました.
以上の理由から,当該研究はおおむね順調に進展していると判断します.
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Strategy for Future Research Activity |
「現在までの進捗状況」で述べたとおり、平成27年度に共同研究者・連携研究者・海外共同研究者が全員参加し,しかもテーマを深く掘り下げた議論の場を設定することができたことから,今後の研究の推進テーマを共有することができました. 具体的には,「研究実績の概要」で述べた無限次元Newton法による精度保証付き数値計算法を深化させ,無限次元Newton法で必要不可欠となる線形化作用素の可逆性と逆作用素ノルムの効率的な検証・評価方法を追求する予定です.提案する無限次元Newton法を,非線形楕円型問題,反応拡散方程式,常微分方程式系,熱対流問題などの具体的な問題に応用します. また,線形化作用素の可逆性を必要としない検証原理の実装として,解を包み込むことが期待される有限次元の集合部分を区間と基底関数で表現する解の検証手法(区間Newton法)について探求し,2次元Navier-Stokes方程式に特別な外力項を課したKolmogorov問題に 対する精度保証付き数値計算を通して,1.および2.の適応性を計算コストとあわせて比較したいと考えています.さらに,無限次元Newton法の具体的な応用として,基本流れの安定性を記述するOrr-Sommerfeld方程式の精度保証付き数値計算を予定しています.
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Research Products
(9 results)