2015 Fiscal Year Annual Research Report
高発光液体シンチレータ検出器によるマヨラナニュートリノ質量の研究
Project/Area Number |
15H03649
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
清水 格 東北大学, ニュートリノ科学研究センター, 准教授 (10400227)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ニュートリノ / 素粒子実験 / 実験核物理 |
Outline of Annual Research Achievements |
KamLAND-Zen実験では、検出器の極低放射線環境を活かし、同位体濃縮キセノンを溶存した液体シンチレータによる二重ベータ崩壊に対して世界最高感度の探索を行い、ニュートリノの有効質量に対して160-330 meVの上限値を得ている。来年度には、キセノン量を約750 kgに増量した拡張計画を実施する予定であり、縮退型のマヨラナ質量(60 meV以上)までを検証する。本研究では、現在よりも高発光量の液体シンチレータ検出器を実現することによりエネルギー分解能を限界まで高め、逆階層型のマヨラナ質量(20 meV以上)の検証を目標とする。 高発光液体シンチレータとしては、安価で高い透過率を持つリニアアルキルベンゼン(LAB)を溶媒とした液体シンチレータが有力であるが、LABには蛍光波長領域で吸光するニトロベンゼン誘導体などの微量な不純物が含まれるため、液体シンチレータとして使用するには透過率改善のための光学的純化を行う必要がある。そこで、LABに対する透過率を精密に評価するための装置を構築し、透過率改善のための光学的純化の試験を行った。以前の研究で比表面積の大きい多孔質素材である活性アルミナ(Al2O3・0.5H2O)や球状シリカ(SiO2・nH2O)を不純物吸着材とした純化が有効であることが分かっていたが、新たに合成ゼオライトの一種であるモレキュラーシーブによる吸着試験を行ったところ、さらに高い純化効率が得られることが分かった。また、LABの発光量測定及び透過率測定を行った結果、KamLANDサイズの検出器で純化されたLABを液体シンチレータとして用いた場合、現在の液体シンチレータと比較して約1.5倍の光量が期待されることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目標であるマヨラナ質量の高感度探索のため、高発光量液体シンチレータの開発を目標としていたが、リニアアルキルベンゼン(LAB)を溶媒とした液体シンチレータの光学的純化のための不純物吸着材の選定及び高透過率測定装置の開発が完了した。順調に進展した理由として、現在の検出器で用いられている液体シンチレータの性能評価方法・純化方法の経験を今回の開発に応用できたことが挙げられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、モレキュラーシーブの吸着純化における流速・温度などのパラメータの最適化、再生・活性化手法の確立、これらを基礎データとしたLAB純化テストベンチの設計・製作を行う。これと並行して、吸光の原因となる不純物の低減を確認する透過率測定に代わる簡易な分析方法の確立も目指す。また、純化後のLABに対するウラン・トリウム系列の放射性不純物の混入量を推定するため、モレキュラーシーブの不純物分析、またはLABの高感度ウラン・トリウム量分析等を検討する。
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