2015 Fiscal Year Annual Research Report
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15H03654
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高田 昌広 東京大学, カブリ数物連携宇宙研究機構, 教授 (40374889)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ダークマター / ダークエネルギー / ニュートリノ |
Outline of Annual Research Achievements |
H27年度から本格的に始動した、すばる望遠鏡Hyper Suprime-Cam (HSC) 深宇宙イメージング(撮像)サーベイを念頭に、その宇宙論統計量からダークエネルギーなどの宇宙論パラメータを制限する手法を開発している。イメージングサーベイから銀河像を精密に測定することにより、手前のダークマターの空間分布を復元することができる。一方、銀河の分光サーベイは各々の銀河までの距離を測定することを可能にし、銀河の3次元分布で宇宙の大規模構造を探る強力な手段である。同じ天域領域のイメージングと分光サーベイを組み合わせることで、着目する銀河まわりのダークマターの分布を明らかにすることが可能になり、いわゆる銀河のバイアス不定性を観測的に除去することができる。H27年度は、このイメージングと分光データを組み合わせた宇宙論の解析法を開発し、実際のCanada-France-Hwaii Telescope (CFHT)イメージングサーベイとスローン・ディジタル・スカイ・サーベイ (SDSS)の分光データに適用し、宇宙論パラメータを制限することに成功した (Miyatake, More, Takada et al., 2015, ApJ, 806, 1; More, Miyatake, Takada et al., 2015, ApJ, 806, 2)。この研究では、銀河の星質量で選択した複数の銀河サンプルで同様の解析を行った。星質量で選択した銀河に関係なく、つまり異なるタイプの銀河についても、それぞれの重力レンズ効果の測定により、銀河バイアス不定性を除去することにより、宇宙論パラメータの制限がその影響を受けないことを定量的に示した。すばるHSCサーベイについても、この手法を適用し、宇宙論パラメータを制限する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上述したように広天域銀河イメージングと分光サーベイを組み合わせた宇宙論解析手法を開発することに成功した。この手法により、銀河の重力レンズ解析によるダークマターの分布と銀河の3次元分布を比較することで、銀河バイアスという物理的な不定性を除去することができる。これまでは、イメージングと分光サーベイプロジェクトに従事する研究グループがあり、それぞれのデータを独立に解析する手法が主であった。この流れに一石をと投じる研究であり、業界で注目されている。さらに、この手法は、銀河バイアスの不定性を除去することで、ダークマターの空間分布(より正確にはそのクラスタリング統計量)から宇宙論パラメータの情報を引き出すことを可能にするので、宇宙論パラメータの制限がどのタイプの銀河を使うか(つまりバイアス不定性の程度が違う銀河)に依らずに宇宙論パラメータを制限できることを定量的に示した。これらの手法は、現在稼働中のすばるHyper Suprime-Camに適用可能であり、さらに開発中のすばる超広視野多天体分光器による分光サーベイにも適用可能である。この意味で、これらの研究は稼働中、将来計画中の広天域銀河サーベイでさらに発展し、様々な研究への応用・展開が期待できる。H27年度中には10編の論文を査読雑誌に発表しており、各々の研究において本研究者は中心的あるいは重要な役割を果たしている。また、複数の国際研究会(学会)でも招待講演に招聘されており、これらの研究成果を発表する機会、また宇宙論の展望を議論する機会を与えられている。これらの意味で、本研究課題は計画通りに順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
すばるHSCサーベイは、H26年度から本格的に始動し、これまでデータは順調に取得できている。これまでのデータを用い、開発してきたデータ解析パイプライン群をテスト、改良を行ってきている。これまでの解析により、実際のHSCデータが、仕様設計通りの性能をほぼ達成していることを確認している。これまでのデータの質、 パイプラインのプロダクト(天体検出、天体カタログ、それぞれの天体の物理量)の様々なテストしており、深刻な系統誤差は見つかっていない。また、銀河像の精密測定から、まだ初期段階であるが、宇宙の階層構造による重力レンズ効果の測定にも成功しており、いよいよこのHSCデータを用い、宇宙論研究を行う準備が整いつつある。今後は、本研究で開発した宇宙論解析手法をすばるデータに適用し、宇宙論パラメータ、特にダークエネルギー、ニュートリノ質量を制限することを目標とする。これらの宇宙論解析に必要な理論モデルについても、数値宇宙論シミュレーションを用い、宇宙論観測量の理論モデルのデータベースを構築していく予定である。
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Research Products
(23 results)
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[Presentation] Connecting Halo (peak) and Galaxy2016
Author(s)
Masahiro Takada
Organizer
Statistics of Extrema in Large-Scale Structure
Place of Presentation
Leiden University, Leiden, the Netherlands
Year and Date
2016-03-07 – 2016-03-11
Int'l Joint Research / Invited
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[Presentation] Halo bias2015
Author(s)
Masahiro Takada
Organizer
Cosmology and First Light
Place of Presentation
Institut Astrophysique de Paris, Paris, France
Year and Date
2015-12-07 – 2015-12-10
Int'l Joint Research / Invited
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