2016 Fiscal Year Annual Research Report
Exploring precision cosmology with Subaru wide-field galaxy surveys
Project/Area Number |
15H03654
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高田 昌広 東京大学, カブリ数物連携宇宙研究機構, 教授 (40374889)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ダークマター / ダークエネルギー / ニュートリノ |
Outline of Annual Research Achievements |
H27年度から本格的に始動した、すばる望遠鏡Hyper Suprime-Cam (HSC) 深宇宙イメージング(撮像)サーベイを念頭に、その宇宙論統計量からダークエネルギーなどの宇宙論パラメータを制限する手法を開発している。イメージングサーベイから銀河像を精密に測定することにより、手前のダークマターの空間分布を復元することができる。一方、銀河の分光サーベイは各々の銀河までの距離を測定することを可能にし、銀河の3次元分布で宇宙の大規模構造を探る強力な手段である。同じ天域領域のイメージングと分光サーベイを組み合わせることで、着目する銀河まわりのダークマターの分布を明らかにすることが可能になり、いわゆる銀河のバイアス不定性を観測的に除去することができる。H28年度は、このイメージングと分光データを組み合わせた宇宙論の解析法を開発し、スローン・ディジタル・スカイ・サーベイ(SDSS)データに適用した。その結果、宇宙最大天体である銀河団のダークマターハローについて、ダークマター粒子の軌道が閉じている自己重力領域、その周辺の宇宙構造の境界領域を明らかにすることに成功した(More, Miyatake, Takada et al. 2016, ApJ 825, 39)。また、上記のすばる望遠鏡HSCプロジェクトのデータを用い、サイエンスの成果を出しつつある(例えば、Honma et al. 2016, ApJ 832, 21)。特に、HSCサーベイデータを解析し、サイエンスにすぐに使える形での天体カタログ(星、銀河)、物理量測定量(位置、各フィルターでの光度、形状など)を2017年2月28日に全世界に公開することに成功した。HSCデータを用いた宇宙論解析の準備が整いつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
すばる望遠鏡最大規模の大型プロジェクトであるHSCサーベイのデータを高精度で解析し、較正済み画像、天体カタログ(星、銀河)、物理量の測定量(位置、各フィルターでの光度、形状)を全世界に公開することができた(2017年2月28日)。5ヶ年計画の約1年分のデータにも拘わらず、総データ量は約80テラバイトと膨大で、既に約1億個の銀河のカタログを作成することに成功した。このデータ量は、10ヶ年の歳月を費やした米国のスローン・ディジタル・スカイ・サーベイのデータ量に匹敵する。さらに、すばるの大口径の威力により、このHSCカタログは宇宙が減速膨張から加速膨張に変遷した宇宙に存在する暗い銀河も含んでおり、138億年にも及ぶ宇宙の膨張史、また重力レンズの観測を通し、ダークマターの空間分布の集積過程の時間進化を明らかにすることができる。また、これに平行して、まだ査読論文には受理されていないものの、宇宙構造形成の大規模なN体数値シミュレーションを大量に実行し、宇宙論観測量の理論模型の構築を進めている。広天域HSC銀河カタログから得られる「高精度」の宇宙論統計量の統計精度に見合う、「正確」な宇宙論の理論模型を構築することが目標である。このように精密宇宙論を行うために、観測、解析、理論の整備を着実に進めることができている。
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Strategy for Future Research Activity |
上述したように、すばるHSCサーベイは、H26年度から本格的に始動し、これまでにデータを順調に取得してきている。これまでに得られているHSCデータを用い、重力レンズ効果、銀河のクラスタリング統計量、銀河団の統計、またSDSS分光データおよび宇宙背景放射との相互相関の測定を行う。これら宇宙論統計量を測定するための手法はすでに開発できている。重力レンズのためのデータ解析の結果をまとめた論文などを執筆し、世界の重力レンズコミュニティーにすばる望遠鏡のデータの威力を宣伝する。 これに平行して、大規模なN体シミュレーションに基づく宇宙論統計量の理論模型の構築の研究では、ガウス過程回帰モデルなど統計の手法を駆使し、任意の宇宙論モデルの宇宙論統計量の理論モデルを高速で回帰(モデル化)するエミュレータ(emulator)を開発する。この試みは世界初であり、この正確な理論模型の詳細に関する論文を執筆し、発表する。 来年度中に、HSCデータから測定した重力レンズ効果などの宇宙論統計量と、上述した理論模型を比較し、ダークエネルギーなどの宇宙論パラメータを制限する。このとき、HSCチーム全体で、ブラインド解析(blind analysis) の手法を積極的に取り入れ、客観的かつ説得力ある結果を導出することに務める。これを目的とし、HSCチームをリードし、用意周到かつ慎重に議論を進める。
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Research Products
(20 results)
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[Presentation] SuMIRe: Subaru imaging and spectroscopic galaxy surveys2016
Author(s)
Masahiro Takada
Organizer
Cross-correlation Spectacular with LSST: Exploring Synergies Between LSST and External Datasets to Discover Fundamental Physics
Place of Presentation
Brookhaven National Lab & Stony Brook University, Stony Brook, USA
Year and Date
2016-05-25 – 2016-05-25
Int'l Joint Research / Invited
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