2015 Fiscal Year Annual Research Report
“逆転の島”の中心核の構造解明:異分野共同による挑戦
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15H03659
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
小田原 厚子 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (30264013)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
下田 正 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (70135656)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 実験核物理 / 超微細構造 / レーザー光ポンピング / 偏極ビーム / ベータ線非対称度測定 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の最初の目的である32Na原子核の基底状態の構造を明らかにするため、まず、32Naの超微細構造を測定し、次に偏極ビームを開発する、という実験の申請書をカナダのTRIUMF研究所に6月に提出した。申請書作成にあたり、原子物理の専門家であり、本研究の研究協力者であるTRIUMF研究所のLevy氏・Pearson氏、日本側の連携研究者である松尾氏(法政大)・畠山氏(東京農工大)とテレビ会議やメールで議論し、具体的な実験手法や方法などを決定していった。提出した実験申請書の審査会が7月実施され、その内容が高く評価されて実験はプライオリティAで認められた。 今回の実験で問題となるのは、ビーム量が毎秒100個程度と少ない点である。このビーム条件でも効率よくNa原子にレーザー照射後に放出される蛍光を測定するため、集光系と検出系を新たにデザインし、製作した。大阪大学の学生1名がTRIUMF研究所に約2週間滞在し、現地の研究協力者と議論しながら設計を進めた。おおまかな原案ができて帰国した後は、テレビ会議やメールで議論しながら、詳細部分を詰めていった。検出系である蛍光モニターは日本の業者に詳細図面の作成と製作を依頼した。集光系であるミラーアセンブリは、球形ミラーの製作が大変難しいため、製作可能な日本の業者が見つからず、TRIUMF研究所にお願いした。同研究所の設計部門が我々の原案をもとに詳細図面を完成させ、工作部門が製作を行った。 2016年の4月はじめに安定核23Naのビームタイムが設定され、設計を担当した大阪大学の学生1名と東京農工大学の学生1名がTRIUMF研究所に3月はじめから滞在し、新しく製作したシステムのテストや実験場所での設置、レーザー系の準備などを行った。学生2名はこのまま4月の実験終了までTRIUMF研究所に滞在予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初、少ないビーム量に対応するための新しい集光系や検出系の製作は来年度行う予定であった。しかし、実験方法の確立とこれらシステムのテストは同時に行う方がよりよい結果が得られると考え、予定を変更した。そのため、来年度に予算を組んでいた集光系・検出系のシステムを今年度に製作するため、予算の前倒し申請を行った。また、これらシステムの設計・製作に時間がかかったため、今年度に予定していた、安定核23Naビームを用いたテスト実験は来年度に実施することになった。 トータルとしては、来年度予定していた実験準備を今年度に実施し、また、今年度に予定していたテスト実験を来年度に行うという点で、時間的にも予算的にも2年間というスパンで考えるならば、大旨順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
4月はじめに安定核23Naビームを用いて、今年度に製作したミラーアセンブリと蛍光モニターの動作テストを行い、かつ、少ないビーム量での実験手法を確立する。この結果をもとに、必要ならば装置の改良や実験手法の見直しを行い、秋にもう1度、安定核23Naビームを用いてテスト実験を行う。一連の測定システムの完成後、今年度の冬頃に、目的の不安定核32Naビームを用い、32Naの超微細構造測定のための実験を行う。実験の結果、得られた超微細構造の値をもとに32Naの基底状態のスピンを決定するため、集団運動計算の大家である浜本氏やAMD計算の専門家である木村氏と議論しながら、基底状態の性質を明らかにする。 超微細構造がわかってしまえば、2 つに分裂した32Na原子状態のエネルギー差だけ波長の異なる2種類のレーザー光を照射することによって、両方の状態をポンプして原理的には100%(実際は50%)の核偏極度を達成することができる。来年度の秋に32Naの偏極ビームの開発実験を行う。偏極度50%を目指す。ビーム完成後、スピン偏極した32Naのベータ崩壊実験を行う。ベータ線・ガンマ線・中性子の同時測定を行い、32Naの崩壊経路を構築する。また、ベータ線の非対称度測定より、娘核32Mgの励起状態のスピン・パリティを決定し、32Mgの原子核構造を明らかにする。
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Research Products
(6 results)
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[Presentation] 偏極不安定核Naビームを用いた中性子過剰Mg同位体の構造研究2015
Author(s)
西畑洸希, 下田正, 小田原厚子, 森本翔太, 吉田晋之介, 八木彩祐未, 金岡裕志, 河村嵩之, 中橋晶, 藤原智貴, 吉住孝之, M. Pearson, C. D. P. Levy
Organizer
日本物理学会 秋季大会
Place of Presentation
大阪市大
Year and Date
2015-09-25 – 2015-09-28
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[Presentation] スピン偏極した31Naのベータ遅延中性子崩壊で探る31Mgの中性子非束縛状態の研究2015
Author(s)
森本翔太, 下田正, 小田原厚子, 西畑洸希, 吉田晋之介, 八木彩祐未, 金岡裕志, 河村嵩之, 中橋晶, 藤原智貴, 吉住孝之, M. Pearson, C. D. P. Levy
Organizer
日本物理学会 秋季大会
Place of Presentation
大阪市大
Year and Date
2015-09-25 – 2015-09-28
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