2015 Fiscal Year Annual Research Report
小型イオントラップを応用した次世代ハドロン加速器における空間電荷効果の系統的研究
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15H03662
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
岡本 宏己 広島大学, 先端物質科学研究科, 教授 (40211809)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 清一 広島大学, 先端物質科学研究科, 助教 (70335719)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 粒子加速器 / 大強度ビーム / 非中性プラズマ / 空間電荷効果 / イオントラップ |
Outline of Annual Research Achievements |
周期的外力によって集束された高密度粒子ビームの物理的性質に関する情報は、大強度ハドロン加速器やイオン冷却蓄積リング等の更なる高性能化を目指す上で極めて重要である。しかしながら、クーロン自己場の影響が無視できない次世代ハドロンビームの基礎物性を系統的に調べるのは、実験的にも理論的にも非常に難しいことが知られている。本研究では、代表者のグループが独自に開発した小型イオントラップシステム“S-POD”を活用し、次世代ハドロン加速器における空間電荷効果のパラメータ依存性を多角度から精査することを目的としている。S-PODを基盤とする「実験室加速器物理」の概念は、大型加速器や高速計算機に依拠した従来のいかなるビーム物性研究手法とも全く異なる。今年度は、主として以下の3つのテーマに関する研究を進めた: A.ラティス対称性(ビーム集束場の時間構造)の弱い破れに起因する集団共鳴現象 B.ドップラーレーザー冷却法に基づくイオン集積実験 C.非線形多極ポールトラップの概念設計 課題Aについては、とくにラティス対称性の劣化に伴って生じる半整数共鳴に注目した。S-PODによる過去の実験データから“半整数チューン近傍の二重共鳴構造”の存在が知られていたが、幅の狭い共鳴帯の起源は特定できていなかった。今回の系統的実験を通じ、この不安定帯は集団的な双極共鳴によるものであることが判明した。並行して、レーザー冷却システムを完備したS-POD I号器によるイオン集積実験(課題B)を実施し、プラズマ閉じ込めポテンシャルやレーザー周波数離調の最適化を行った。さらに、課題Cの設計研究も進め、補助電極の導入による低次非線形場の制御が可能であることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載した研究実施計画通り、特定のラティス構造(欧州合同原子核研究機構や東海村J-PARCで稼働中の大型陽子シンクロトロン等)を想定したS-POD実験がおおむね順調に進捗している。とくに、ラティス対称性の破れに起因する半整数共鳴について、新しい有益な知見が得られた。また、予定していた“非線形多極ポールトラップの概念設計”もほぼ完了することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
上述の通り、今のところ当初の研究実施計画に沿ってほぼ問題なく実験を進めることができており、研究内容の詳細に大きな変更を加えることは考えていない。次年度のS-POD実験では、チューンダイヤグラム上で共鳴不安定領域を探索することになってるが、そのための高周波システムの準備は既に整っている。実験データ解析用の多粒子追跡コードならびに非線形多極ポールトラップの機械設計に必要な3次元電磁場解析コードは初年度に使ったものがそのまま流用できる。S-POD I号器および II号器に加え、場合によってはIII号器の活用も視野に入っており、実験機材の準備状況は万全である。
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Research Products
(10 results)