2017 Fiscal Year Annual Research Report
Investigations of local excitation of two-dimensional electron systems by helical THz waves
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15H03673
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
野村 晋太郎 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (90271527)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三沢 和彦 東京農工大学, その他の研究科, 教授 (80251396)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 半導体 / 二次元電子系 / 偏光状態任意操作 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度において、前年度までに開発したベクトル整形ねじれ偏光パルス光を発生させる手法を用いて、(1)ヘリウム温度中においたGaAs/AlGaAs変調ドープ量子井戸試料の局所励起効果、(2)遷移金属ダイカルコゲナイドMoS2の作製と光照射効果に関する研究を進めた。本研究に適した構造をもつGaAs/AlGaAs変調ドープ量子井戸ホールバー試料を作製した。この試料にベクトル整形ねじれ偏光パルス光を斜め入射し、ホールバー端子間に誘起される偏光回転方向に同期した電圧を検出した。その結果、光パルスの二次分散量、偏光方位角回転振動数、回転の向きに依存した光起電力を観測した。電場包絡線のTHz回転の向きの反転による検出信号の符号の反転が観測された。さらにホールバー上の光照射位置に依存して検出信号の符号の反転が観測された。以上の結果は試料の端を流れる“エッジ”電流と試料の中央部でも観測される“バルク”電流からなるモデルで理解された。このベクトル整形ねじれ偏光パルス光を照射する二次元電子系試料として、遷移金属ダイカルコゲナイドMoS2をチャネルに用いた電解効果トランジスタを作製した。MoS2薄膜チャネルと絶縁膜の間の界面ラフネス散乱、SiO2絶縁膜中の固定電荷等による散乱等の影響を低減するために、六方晶窒化ボロン(h-BN)でMoS2薄膜チャネルの上下を挟んだ構造を作製した。その結果、ヘリカル電磁場局所照射測定に供することの可能な線形領域においてヒステリシスがほぼゼロの特性が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度、THz帯のベクトル整形ねじれ偏光パルスをホールバー試料に照射した際に、偏光方位角回転振動数とその回転の向きに依存した“エッジ”電流“の観測に成功したことは、無磁場下での量子ホール状態の観測、ひいては光照射による物質の量子相状態の動的制御のための重要なステップである。現時点では得られた結果の物理的な機構の詳細は明確ではなく、さらに研究を進めそれを明らかにしていく必要がある。以上の点により、概ね計画通りに進んでいると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度、ベクトル整形ねじれ偏光パルス光を斜め入射することにより得られた偏光回転方向に同期した信号は、ヘリカルTHz帯回転電場によって二次元電子系の角運動量が励起されたことによると推定されるが、その物理的な機構の詳細については現時点では明確ではない。そこで今後、その物理的機構の解明のためにさらに研究を推進する。あわせてMoS2薄膜をチャネルとして用いた電界効果トランジスタを用いた二次元電子系の局所励起効果の解明を進める。
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Research Products
(12 results)