2017 Fiscal Year Annual Research Report
第一原理計算に基づく極限パルス光と物質の相互作用の解明
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15H03674
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
矢花 一浩 筑波大学, 計算科学研究センター, 教授 (70192789)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
乙部 智仁 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 関西光科学研究所 光量子科学研究部, 主幹研究員(定常) (60421442)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 時間依存密度汎関数理論 / 第一原理計算 / 超高速ダイナミクス / レーザー科学 / アト秒科学 |
Outline of Annual Research Achievements |
時間依存密度汎関数理論に基づく固体中の電子ダイナミクスに対する第一原理計算法を発展させ、高強度パルス光が誘電体に照射する際に起こる様々な現象を調べた。これまで開発を進めてきた計算コードをSALMON(Scalable Ab-initio Light-Matter simulator for Optics and Nanoscience)と名付け、オープンソースソフトウェアとしてウェブサイトhttp://salmon-tddft.jpにおいて公開するとともに、コード論文を執筆し投稿した。 ダイヤモンドに高強度パルス光を入射して発生する高次高調波発生に関して、ミクロなシミュレーションをウィーン工科大学の研究グループと協力して行った。誘電体の高次高調波発生では、結晶の単位セルで計算を行うと明瞭な高調波が得られないという問題が知られている。これに対して我々は、高調波が結晶中の様々な場所で発生し伝播する効果を取り入れることで明瞭な高調波が得られることを示した。 アト秒パルスと固体の相互作用を記述するために内殻電子のダイナミクスをあらわに扱う必要が生じる。これまで我々が開発してきた一様空間格子を用いる計算手法では、局在した内殻電子軌道を記述するために非常に小さい格子間隔が必要とされていた。このため、局在原子軌道を用いた電子ダイナミクスのシミュレーション法の開発をSLACの研究者と共同で行った。 物質の誘電的性質が光の周期よりも小さい時間スケールで変化する現象として、動的フランツ・ケルディッシュ効果を調べている。これまでの解析的な理論では、電子励起を無視しており、基本振動数の偶数倍の変調が示されてきた。これを電子励起を取り入れることができるよう一般化したところ、k空間での非対称な電子分布により奇数倍の変調が生じることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
光電磁場と電子ダイナミクスの結合した新奇なシミュレーション法を発展させ、先端の光科学研究を解明する研究が順調に進展していると判断している。開発した計算コードをオープンソースソフトウェアとして公開することで、計算光科学の発展に貢献する取り組みが進んでいる。また動的フランツ・ケルディッシュ効果や高次高調波発生など、高強度パルス光と誘電体の相互作用に関する取り組みが成果を挙げている。
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Strategy for Future Research Activity |
我々の進める時間依存密度汎関数理論に基づく電子ダイナミクスの第一原理シミュレーション法は、数サイクルのフェムト秒パルス光を用いた超高速ダイナミクスやアト秒科学の分野において極めて有効であることが明らかになっており、さらに多様な現象の解明を目指して研究を発展させたいと考えている。 これまでは、バンドギャップが光振動数よりも大きい透明誘電体を主な対象としてきたが、これを金属と高強度パルス光の相互作用へと発展させたいと考えている。そのために、光電磁場と電子のダイナミクスを同一の空間格子を用いては記述する新たなシミュレーション法を発展させる。また電子と原子のダイナミクスを同時に扱うエーレンフェスト分子動力学計算に対する取り組みも進めたいと考えている。
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Research Products
(25 results)