2015 Fiscal Year Annual Research Report
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15H03695
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
細越 裕子 大阪府立大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (50290903)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 有機磁性体 / 有機ラジカル / 量子スピン系 / 結晶構造 / 磁化率 / 比熱 / 基底状態 / 磁気的競合 |
Outline of Annual Research Achievements |
安定有機ラジカルとして知られるニトロニルニトロキシドおよびフェルダジルのπ共役系を制御することで、多方向への磁気ネットワーク形成を行った。特に、ラジカル平面と、これと連結するπ共役平面との間の二面角を大きくすることが、多方向への磁気ネットワーク形成に有効であることを実証した。以下に代表的な具体的成果を示す。 3-(2,6-ジクロロフェニル)-1,5-ジフェニルフェルダジルは結晶中で、ハロゲノフェニル平面と、フェルダジル平面とをほぼ直交させ、多方向への分子間接近がみられた。結晶学的に独立な2分子のうち、一方が分子内に2回軸を含むため、2分子の存在比が2:1となり、その結果、部分的に頂点共有された五角形格子が三次元的に連なる格子が形成された。磁気相互作用の競合が示唆され、磁化が飽和する近傍に、新しい量子磁気相の出現が観測された。 ビフェニルの2位にニトロニルニトロキシドを置換した化合物において、結晶中で、フェニル平面とニトロニルニトロキシド平面とが約80°捻じれることを見出した。類縁骨格3種類において、類似の二本足梯子格子の形成に成功した。磁化曲線から、飽和近傍で磁気相の存在が示唆され、対角方向の次近接相互作用との関係に興味が持たれている。 また、ラジカル平面とπ共役平面とが捻じれた骨格を持つニトロニルニトロキシドビラジカルを数種合成し、二次元あるいは三次元的な磁気ネットワークが形成されることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
多次元量子磁気格子の量子効果を解明する上で、二次元および三次元磁気格子を戦略的に合成することは必要不可欠であるが、多次元磁気格子形成のための分子設計指針を得ることができたため。また、いくつかの物質について低温磁場中物性測定において、新しい磁気相の観測に成功しており、二年次以降にその詳細を明らかにする方針が明確になったため。
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Strategy for Future Research Activity |
初年次に得られた量子磁性体について、低温磁場中熱測定を行い、その量子相の性質を探る。また、初年次に得られた分子設計指針に基づき、新しい量子磁性体の合成を行う。磁気的な競合をもつフラストレート磁性体についても合成を進める。低温構造解析と低温磁場中各種物性測定を進め、新しい量子磁気状態の観測と量子化機構の解明研究を発展的に継続する。
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Research Products
(18 results)