2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15H03699
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
大関 真之 京都大学, 情報学研究科, 助教 (80447549)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安田 宗樹 山形大学, 理工学研究科, 准教授 (20532774)
田中 宗 早稲田大学, 付置研究所, 助教 (40507836)
中島 千尋 東北大学, 学内共同利用施設等, 助教 (40599122)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 最適化問題 / 量子アニーリング / 詳細釣り合い / 機械学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究初年度の目標は、素因数分解の相転移の性質について明らかにすることである. 研究分担者の中島千尋と研究代表者の大関真之が主に検討を重ねて、素因数分解模型が持つ相転移の特殊性について論じた.結論として、1次転移と2次転移の両者の持つ特異的な性質を含む非常にユニークな模型であることが見出された.この結果に基づき、量子アニーリングで素朴に最適化問題をとくことで素因数分解を行う際には計算量爆発を引き起こすことが予想されるが、他の難しい最適化問題に比べて、まだ計算量を削減する余地があることが明らかとなった.すなわち横磁場以外の揺らぎを導入することによって、1次転移を回避しうる先行研究や、反強磁性相互作用を含む量子性の強い揺らぎを利用したユニバーサルな量子計算手法を用いることで素因数分解が効率よくとくことができる事実と矛盾しない結論を得ている.本研究成果は次年度始めに論文に出版、学会等での公表を行う. また最適化手法として量子アニーリングが持つ潜在能力を最大限活かすために、現状現れる最適化手法や確率過程について総ざらいすることを目的とした基礎的検討を行った.非平衡統計力学の知見である詳細釣り合いの破れを利用したアルゴリズムについて定常分布への緩和が加速することが知られていたが、その物理的背景についてレアイベントサンプリングとの接点を発見した.また詳細釣り合いの破れを比較的容易に実装する方法論を確立することに成功した.どちらも古典的な確率過程に関する研究成果であるが、いずれも量子系への拡張が可能である.さらに大規模で高次元データを用いる機械学習において利用される確率勾配法において、この手法の有効性も確認することができており、初年度に得られた成果の広範囲に及ぶ影響が期待される.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
論文件数4件の充実度も去ることながら、それぞれ今後の発展の基礎となる成果が出ていることが挙げられる.さらに研究代表者始め分担者による研究成果に関する講演数、書籍の執筆等を含む、一般からの引きを強く感じる.次年度以降の成果を含め、社会還元がより進むことが期待される.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降は、機械学習アルゴリズムへの応用を中心に考察を加える. また素因数分解特有のエントロピー構造を持つ数理的模型の発見について追加することで当初予想されていた成果よりも大きな数理的基盤を形成することを目指す.
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Remarks |
ZDNet Japan及びIntelligence designerと云うWeb媒体で一般人向け連載を研究代表者が担当.太田出版ケトルにより研究代表者の研究成果報道.研究分担者田中が国際ワークショップ "YITP Workshop on Quantum Information Physics"を開催、研究会「イジングモデル型情報処理デバイスの現状と展望-物理学と情報科学の夢の架け橋-」を開催
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Research Products
(52 results)