2016 Fiscal Year Annual Research Report
時間分解分子軌道分光による光化学反応における非断熱遷移の研究
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15H03702
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
関川 太郎 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (90282607)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 高次高調波 / 光電子分光 / 非断熱遷移 / 共役ジエン |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度までに、ブタジエン誘導体の緩和ダイナミクスを時間分解光電子分光により観測し、置換基によりダイナミクスが変わることを見出した。しかし、光電子分光の結果のみでは理解することができない現象があった。それをうけ、今年度の研究目的・計画は、① イオン化質量分析法により、励起後の解離生成物の時間依存性を計測する。これらの結果と昨年度の結果を合わせて、置換基が緩和ダイナミクスに与える効果を研究する。また、②連携研究者である量子化学計算の専門家である北海道大学理学研究院の武次徹也教授(連携研究者)に、励起状態のポテンシャル面や緩和経路の理論面からの検討を依頼した。 ①に関しては、量子科学技術研究開発機構関西光科学研究所の板倉隆二博士、赤木浩博士のに協力を依頼し、フェムト秒レーザーを用いた時間分解質量分析法により解離種の検出を試みた。光励起後、全イオン種の終了が数百フェムト秒のうちに減少することがわかった。昨年度の時間分解光電子分光の結果と比較すると、光励起により誘起された分子振動によりイオン化確率が小さくなると考えられる。置換基により誘起される分子振動に違いが生じ、それが置換基効果に現れると考えられる。 ②に関しては、ブタジエン誘導体におけるエネルギーポテンシャル面の計算がされた。置換基に応じて基底状態と励起状態間の円錐交差の構造が変わることがわかった。これが光励起による構造変化に対応し、誘起される振動モードの違いへとつながる。その結果、イオン化確率が変化する。 他方、昨年度導入したレーザー発振器に、今年度は増幅器を組み合わせることが可能になった。エネルギーが増すことにより、励起波長を変更することが可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
共役ジエンである1,3-ブタジエンは、非断熱遷移により高速に基底状態へ緩和すると考えられており、非断熱遷移ダイナミクスを研究するのに適した系である。今年度までに、緩和過程に関して理解することができた。来年度はその知見の評価を世に問う段階であり、おおむね順調に研究は進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
実験結果の再現性の確認、および、共同研究者らとの実験結果の解釈に関する合意は得られた。今年度は、国際会議において他の研究者と議論を行い、論文誌での公表をめざす。
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Research Products
(10 results)
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[Journal Article] Electronic and non-adiabatic dynamics: general discussion2016
Author(s)
A. J. Orr-Ewing, O. Schalk, J. P. Marangos, H. J. Worner, R. J. D. Miller, W. Domcke, K. Ueda, D. M. Neumark, A. Stolow, D. Dowek, S. Mukamel, T. Sekikawa
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Journal Title
Faraday Discussions
Volume: 194
Pages: 209-257
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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