2017 Fiscal Year Annual Research Report
Application of spin conversion reactions of positronium for analyzing the atomic scatterings
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15H03703
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
齋藤 晴雄 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (60235059)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
澁谷 憲悟 東京大学, 大学院総合文化研究科, 助教 (20415425)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 陽電子 / ポジトロニウム / 原子散乱 / スピン-軌道相互作用 / 電子対消滅放射線 / シンチレーション検出器 / デジタルオシロスコープ |
Outline of Annual Research Achievements |
低エネルギー領域(室温~650度)におけるポジトロニウム(Ps)-Xe原子散乱の測定結果(消滅率・運動量移行断面積)に部分波解析を適用し、散乱パラメータを求めた。この解析から、PsのXeガス中での消滅率が温度とともに著しく増大する現象は、スピン転換消滅[PsとXe原子のスピン軌道相互作用により、スピン三重項Ps(o-Ps)が短寿命のスピン一重項Ps(p-Ps)に転換することによる消滅率]とピックオフ消滅率(o-Psの陽電子がXe原子の中の電子と衝突して対消滅することによる消滅率)のエネルギー依存性として説明され、この二つの消滅経路以外を考慮する必要はないことが分かった。(2013年の研究では、ピックオフ消滅率の温度依存性が他のガスに比べて極めて大きいことから、共鳴状態などの未知の消滅経路が存在する可能性が残されていた。) 解析の結果、Ps-Xe散乱の散乱長はボーア半径の2.06±0.10倍と求められた。これは、Ps-Xe散乱を支配する長距離力は引力(ファンデルワールス力)であるが、Xeのポテンシャルは全体としてPsに弱い斥力を及ぼすことを示唆しており、これまでの理論的な予想とも一致している。また、Psのエネルギーがゼロの極限では、全断面積が12±2×(10の-20乗)[mの2乗]と求められた。これは、Ps中の陽電子が電子よりも強くポテンシャルを感じていることを示唆している。 また、微分散乱断面積を計算すると、低エネルギー領域でのPs-Xe散乱では、前方散乱の割合が高いことが示された。これは、低エネルギー領域でもp波散乱の寄与が無視できないためであり、s波散乱で禁制のスピン転換消滅が室温でも高い割合で観測される事実と一致する。 以上の結果をフィジカル・レビュー・A誌に投稿し、2018年3月30日付で受理された。
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Research Progress Status |
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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Research Products
(3 results)