2016 Fiscal Year Annual Research Report
高分解能版大気圏・電離圏モデルによる熱圏重力波の研究
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15H03733
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
三好 勉信 九州大学, 理学研究院, 准教授 (20243884)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
品川 裕之 国立研究開発法人情報通信研究機構, 電磁波研究所宇宙環境研究室, 短時間研究員 (00262915)
藤原 均 成蹊大学, 理工学部, 教授 (50298741)
陣 英克 国立研究開発法人情報通信研究機構, ソーシャルイノベーションユニット戦略的プログラムオフィス, プランニングマネージャー (60466240)
フイシン リュウ 九州大学, 国際宇宙天気科学・教育センター, 准教授 (70589639)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 超高層大気環境 / 大気上下結合 / 数値シミュレーション / 大気重力波 |
Outline of Annual Research Achievements |
下層大気起源の大気重力波が熱圏・電離圏変動におよぼす影響について,対流圏から熱圏・電離圏までを含むモデル(GAIA)による数値シミュレーションにより調べた。昨年度に引き続き,平成28年度は,2009年1月に発生した成層圏突然昇恩現象に注目し,2009年1月から3月の間についてGAIAによる数値シミュレーションを実行した。電子密度や電離圏全電子数(TEC)変動と熱圏重力波との関連性に着目して解析を行った。その結果,重力波により励起されたと見られる電子密度変動が再現された。 さらに,いままでのGAIAモデルの水平分解能は約100kmであったが,より分解能の良いモデル(水平分解能約50km)の開発および数値シミュレーションを引き続き行い,11月から3月の条件での数値シミュレーションに成功した。昨年度行った6月の条件での結果と比較・検討することにより,北半球冬季と南半球冬季における熱圏重力波活動度の違いを調べることができた。従来のモデル(水平分解能約100km)の結果と比べても定性的には同じ結果となることが確認できた。 熱圏重力波活動は,大気潮汐波に伴う風速変動の影響を強く受けることが知られているので,熱圏重力波を精度よく再現するためには,大気潮汐波のより正確な再現が必要となる。解析の結果,太陽同期潮汐波成分(DW1, SW2)のみならずDE3, SW1, SW3といった比較的大振幅となる太陽非同期潮汐波についても一部を除いて,観測と良い一致が得られることを確認した。 高度260kmでのGOCE衛星による観測に現れた重力波活動の日変化特性とGAIAモデルで得られた重力波活動の日変化特性について比較・検証をおこなった。その結果,基本的にGAIAの結果はGOCE衛星の結果とよく似ており,重力波活動と大気潮汐波の関連について明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
対流圏から熱圏・電離圏までを含むモデル(GAIA)による数値シミュレーションを実行し,下層大気起源の大気重力波が熱圏におよぼす影響について調べることができた。北半球冬季における熱圏大気重力波と対流圏・成層圏変動との関連性について,明らかにできた。熱圏重力波が電子密度や電離圏全電子数(TEC)におよぼす影響についての解析を行い,熱圏重力波により励起されたと見られる電子密度変動が再現できた。このことは大きな成果であるといえる。ただ,詳細な解析については十分ではないので,平成29年度に引き続き行う予定である。 昨年度開発した高水平分解能GAIAモデル(水平分解能50km)についても,引き続き数値シミュレーションを実行することができた。北半球冬季における計算結果が出たことは,今後の研究を進める上で非常な前進であると考えられる。さらに,重力波鉛直伝播にとって重要な大気潮汐波に伴う背景風変動についても,衛星観測結果と比較・検討することができた。また,衛星観測結果との比較を行うことができGAIAモデルの結果の検証ができた。 成果公表として,解析結果を国際誌(J. Atmos. Sol-Terr. Phys) に査読付き論文として発表することができた。さらに,国際会議で招待講演できた意義は大きい。多くの国際学会・国内学会で研究成果を発表できた。このようにおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度に引き続き,対流圏から熱圏・電離圏までを含むモデル(GAIA)による数値シミュレーション結果についての更なる解析を行い,熱圏大気重力波が熱圏・電離圏におよぼす影響について解析を行う。特に,昨年度までの解析で明らかとなった,熱圏大気重力波によるとみられる電離圏変動(大規模伝搬性電離圏擾乱(LSTID))に注目して解析を行う。本年度は,さらに詳細な解析を行うことで,下層大気起源の大気重力波により,どの程度の大規模伝搬性電離圏擾乱が生成されるかについて明らかにする。これを基に,熱圏大気重力波と大規模な電離圏擾乱の関連について,熱圏-電離圏相互作用の観点から解析を行う。 水平分解能を良くしたGAIAモデル(水平分解能約50km)については,春季や秋季についてもシミュレーションを実行し,大気重力波のふるまいに関する解析を引き続き行う。 赤道域のF層で発生するプラズマバブルに関して,GAIAモデルで得られたプラズマバブルの発達率と観測されるプラズマバブルの発生頻度との比較・検証を引き続き行い,大気重力波をはじめとする大気波動がプラズマバブルの発生におよぼす影響について明らかにする。衛星観測結果との比較についても引き続き実行し,GAIAモデル結果の検証を行う。
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Research Products
(20 results)