2015 Fiscal Year Annual Research Report
共鳴散乱法を応用したスピネル型鉱物の陽イオン席占有率精密解析
Project/Area Number |
15H03747
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
奥部 真樹 東京工業大学, 応用セラミックス研究所, 助教 (10397060)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 共鳴散乱 / スピネル構造 / 電子密度分布 / 陽イオン分布 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究で扱うスピネル構造では陽イオンの占有サイトが、4配位のAサイトと8配位のBサイトの2種類ある。遷移金属スピネル酸化物では、陽イオンの3d軌道と酸素の2p軌道が混成するなど相関が特に大きい。本研究では、Tiを中心とした遷移金属スピネル酸化物の陽イオン分布と2種類の陽イオンサイトの配位環境の違いが、電子配置、電子状態およびその物性に及ぼす影響ついて議論することを目的としている。本年度においては、マグネタイト(Fe3O4)およびチタノマグネタイト(Fe3-xTixO4)の幾つかの天然試料を収集した他、既に手元にある比較参照用の遷移金属スピネル酸化物(Fe3-xMxO4(M=Mn, Niなど))を用いた共鳴散乱実験を行った。組成の異なる幾つかのFe3-xMnxO4について、陽イオン席占有率の決定を行った。また、吸収端近傍での特徴的な電子遷移に注目したMnイオンの電子密度分布解析も行った。単結晶および粉末の試料を用いて、吸収分光法とX線共鳴散乱を併用した相補的な実験と解析を行った。席占有率を求める解析には、実験室系及びPhoton Factoryにおいて、共に4軸回折計を用いた測定データを用いた。共鳴散乱実験と吸収実験を併用することで、電子のエネルギー状態と関連付けられる電子密度分布を求めた。電子密度分布解析からは、Mnイオンの特定の電子遷移に関与した、即ち同種イオンであっても配位環境の違いを区別した電子密度分布が得られた。得られた陽イオンの席占有率や価数から、組成とMn席占有率の関係を考察した。また、得られた電子密度分ではと既報の理論計算によるDOSとを比較した。吸収が最大となるエネルギー近傍以外(測定強度不足のため)のエネルギー領域での解析では両者の結果は比較的良く一致した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、スピネル構造の2つある陽イオン席(2つあるAサイトとBサイト)の電子密度分布を独立に求め、測定エネルギーを選択することで特定の電子状態をもつ電子のみの電子密度分布が得られることを検証できた。吸収端より高エネルギー側での複数のエネルギー点でのデータ測定から、吸収が大きいエネルギー領域での要検討事項も検証できた。本研究費にて取得した低温装置のセットアップも終了し、試験測定も開始している。試料合成の面では当初の予定より若干遅れているが、計画全体としてはおおむね順調に進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
継続して放射光X線を用いた共鳴散乱実験を行う。試料の吸収が大きいエネルギー領域での測定となるため、ノイズ低減など実験技術上の工夫や改良点を検討する。遷移金属酸化物の陽イオン分布は、試料の合成方法(固相法か水熱法か等)や合成温度の高低にも依存して変化するとの報告もある。合成法の異なる系統の試料を揃え、熱力学的観点からの考察も試みる。
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Research Products
(7 results)