2015 Fiscal Year Annual Research Report
欠陥場におけるマントル鉱物中の原子拡散プロセスの解明
Project/Area Number |
15H03750
|
Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
富岡 尚敬 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 高知コア研究所, 主任技術研究員 (30335418)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 元雄 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 高知コア研究所, グループリーダー代理 (40606109)
Das Kaushik 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (40634077)
安東 淳一 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (50291480)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 原子拡散 / 輝石 / 透過電子顕微鏡 |
Outline of Annual Research Achievements |
1. 面欠陥中の原子拡散実験に先立ち、天然試料における同現象の探索と記載を試みた。その結果、コンドライト隕石のコンドリュールに含まれるMgSiO3輝石の一部の粒子では、Feがラメラ状にゾーニングしていることをSEM-EDS分析により見出した。この粒子をFIBで薄膜化し、TEM-EDSで観察を行ったところ、(100)面に高頻度の積層欠陥がみられ、それらはFeに富むラメラの配向と一致することが明らかになった。このことは、積層欠陥面がFeの高速拡散路である可能性を示している。 2. オリビンがアンチゴライト化する際に放出されたFeが、残存するオリビン中の転位線に沿って選択的に再度拡散移動する現象(パイプ拡散)が生じたことが既に予想できていた蛇紋岩海山起源の試料に対して、STEM-EDSによる元素マッピングをおこなった。この結果、パイプ拡散により転位線近傍に生じたFeの微視的な分布を明らかにするとともに、Mnのパイプ拡散も生じていることを見出した。 3. 衝撃を受けた隕石中には、地球マントル深部に存在すると考えられるケイ酸塩高圧相が含まれるが、その多くは面欠陥を示すことから、TEMによる観察も進めている。その過程で、これまで天然では見つかっていなかったMgSiO3組成の正方晶ガーネット相を初めて発見し、Science Advances誌に公表した。この成果は新聞やインターネットでも紹介された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
天然試料における欠陥中の原子拡散現象の観察については、一定の成果が得られた。また、隕石に含まれる超高圧鉱物中の面欠陥を観察する中で、副次的にこれまで天然では報告例のなかった超高圧鉱物を世界に先駆けて発見した。この成果は、論文として公表済みであり、マスコミからも大きな反響が得られている。一方で、当年度の開始予定であった面欠陥中の拡散実験については、面欠陥を加熱で回復させずに、かつ原子拡散を促進するための温度条件の最適化に手間取っており、現在のところ、本課題の目的にあった拡散プロファイルを得るに至っていない。
|
Strategy for Future Research Activity |
初年度に行った天然試料の観察に基づき、MgSiO3輝石単結晶中の面欠陥が陽イオンの高速拡散路となり得ることを、天然試料の観察から確かめることができた。今後はこの産状を実験的に再現し、その卓越条件をすべく、酸素分圧制御電気炉または、一軸加熱変形装置を用いて、合成MgSiO3単結晶中のFe拡散実験を進める。隕石中のMgSiO3輝石にSEMのスケールで確認されたFeのラメラ状ゾーニングは、TEMの観察スケール(数ミクロン以下のオーダー)で確認するには大きすぎ、面欠陥とFe拡散の関係を直接的に確かめるのは困難であった。したがって、拡散実験ではMg-Feの均質化が大きく進行しないよう、拡散実験を短時間の加熱、あるいは低い温度で行う必要がある。この点を考慮した実験デザインを早急に進め、再現実験を進める予定である。 また、STEMにおける高角度散乱環状暗視野(HAADF)像は、一般に試料の平均原子番号に応じた化学組成コントラストを示すが、電子線チャネリング効果による結晶方位コントラストが重複する可能性がある。そのため、面欠陥が卓越した試料では、欠陥の組織に対応したチャネリングコントラストを、化学組成の不均質さと見誤る可能性も高いため、その検証と対策も慎重に行う。
|
Research Products
(5 results)