2016 Fiscal Year Annual Research Report
はやぶさ2に向けた新手法開発による隕石のCT観察および初期太陽系の物質循環の解明
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15H03755
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Research Institution | Japan Synchrotron Radiation Research Institute |
Principal Investigator |
上椙 真之 公益財団法人高輝度光科学研究センター, 利用研究促進部門, 研究員 (20426521)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 隕石 / 放射光CT / X線回折 / XRD-CT / 炭素質コンドライト / サンプルリターン計画 |
Outline of Annual Research Achievements |
新しい放射光CTシステムを用いて、炭素質コンドライト、及び、炭素物質を含む隕石の三次元組織、X線回折、回折トモグラフィ、及び微細組織観察を行った。炭素物質の構造によって、グラファイト、ダイヤモンドなどの組織を識別することに成功し、さらに炭素質コンドライトにおける、炭酸塩鉱物の同定にも成功した。これらは従来のCT法では判別できなかった物で、今後の新しい非破壊分析手法の確立に成功している。 また、XRD-CTは実験時間の制約から、2次元マッピングしか取れないが、この問題を補完するために、試料を長軸方向にフォーカスしたX線でスキャンして、X線回折のラインプロファイルを取る手法を開発した。これにより、試料中のどの部分にどのような鉱物が存在するか、を大まかに特定することが可能になった。 また、ソフトウェアの改良にも成功し、これまで一ヶ月以上かかっていたデータ解析を、実験中の1週間以内に終えることが可能になった。また、多くの部分を自動化しているため、計算機さえ増やせば、さらに高速化が見込める。また、これらの解析手法の改良によってこれまで見つけることの出来なかった特徴的な鉱物組織の構造を発見できており、また、結晶の配向をマッピングする手法の開発にも着手している。 試料ハンドリング、及び試料保管のための大気遮断、窒素雰囲気精製環境の構築を開始しており、いくつかのシステムは運用が始まっている。希ガスの除去は出来ないが、大気中の水分、酸素の遮断は極めて低コストで実現できている。
本研究の成果は、地球惑星科学、地球化学、光学の各分野において、日本国内の学会、及び国際学会で本年度報告予定である。また、現在論文を複数作成中であり、年度内に投稿予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年までに放射光CTのセットアップに関する開発は終え、炭素質コンドライトのデータの取得を行っている。これらのデータは国際誌に報告予定であり、また、はやぶさ2の帰還試料のリファレンスとして、十分な精度を持っている。 昨年までは実験データを解析するのに膨大な時間を要していた。これは、XRD-CTのデータが1データ200GB程度ときわめて膨大なためである。このため、ソフトウェアを大幅に改修し、多くの部分を自動化した。これにより、試料のデータをいちいちチェックしながら解析することなく、全領域を網羅的に解析することが可能となった。 しかし、このためデータベースのフォーマットが大きく変わることになった。データベースは現在改修中であり、本稼働は大幅にずれ込む見込みである。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度、試料ハンドリング、及びデータベースの最後の修正に当たる。 試料ハンドリングシステムとして、グローブボックス、顕微鏡を組み合わせたシステムを構築し、試料の大気遮断環境下でのハンドリングを実現する。これにより、はやぶさ2で帰還した試料を、大気遮断のまま放射光で非破壊分析することが可能になる。
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