2015 Fiscal Year Annual Research Report
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15H03764
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山下 晃一 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (40175659)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 有機薄膜太陽電池 / 光電変換効率 / 電荷再結合 / モルフォロジー |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は有機薄膜太陽電池効率を左右する分子パラメータとその制御による高効率化を理論的に研究を進めた。まず電子ドナーであるP3ATの側鎖長と側鎖形状(Regioregularity)が効率に与える影響を解析した。P3ATの側鎖長および側鎖形状の変化が薄膜中のP3ATの主鎖構造や、P3ATと電子アクセプター(PCBM)間距離、P3ATマトリックス中のPCBMの凝集度を変化させ、その結果、電荷移動状態のエネルギーおよび電荷再結合の反応速度定数が変化することを通して光電変換効率が変化することを見出した。対応する実験研究ではP3ATの側鎖長や側鎖の形状によりヘテロ界面における分子形状や分子集合体のモルフォロジーが変化するため、再結合速度が変化することが実証されており、今後、再結合速度の電子論的要因に注目し、ドナー分子とアクセプター分子の分子軌道の広がりによる再結合速度の定量づけを検討する。また低分子Diketopyrrolopyrrole (DPP)誘導体ドナーの理論的解析を行い、光電変換効率の高い誘導体では光吸収と同時に電荷分離が起きる界面電荷移動型光遷移が顕著に現れていることを明らかにした。さらにDPP誘導体の種類を増やし、高分子系にも応用し、界面電荷移動型光遷移が効率に与える影響の普遍性と重要性を検証した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題では、分子が吸着した固体表面や分子集合体がつくるナノ界面に光が照射され生成するエキシトン(電子―正孔対)の特異性による光エネルギー変換の過程を理論的に解析することを目的としている。平成27年度は有機ドナー/有機アクセプター界面における光誘起キャリア移動と光エネルギー変換の過程について新たな知見が得られ、今後これらナノ界面におけるキャリア輸送と光エネルギー変換についての理論計算手法開発の展望が見えた。
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Strategy for Future Research Activity |
有機太陽電池高効率化指針の重要なものの1つとして、光吸収した直後における電子/正孔対の再結合抑制が考えられる。そのため、有機系材料の高誘電率化に向けて、孤立単分子に対する量子化学計算に基づいた、新規高誘電率有機材料の理論設計を計画している。高伝導性チオフェン系分子のパイ共役性を広げることで、ドナー/アクセプター分子の比誘電率が向上し、典型的なP3HT/PCBM系に比べて再結合抑制が可能な有機薄膜太陽電池系の理論設計が可能となると期待される。
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Research Products
(11 results)