2016 Fiscal Year Annual Research Report
天然物由来の脂質・膜タンパク質複合体が見せる協奏作用と分子機能の解明
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15H03768
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Research Institution | Toyohashi University of Technology |
Principal Investigator |
手老 龍吾 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40390679)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平野 愛弓 東北大学, 原子分子材料科学高等研究機構, 教授 (80339241)
戸澤 譲 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (90363267)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 脂質二重膜 / 表面・界面物性 / 膜タンパク質 / 原子間力顕微鏡 |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞膜モデル系である脂質二重膜内において、1 つのタンパク質分子が活性化されることで周囲の複数のタンパク質分子に活性状態が伝播する現象について、そのメカニズムを分子レベルで解明することを目的とする。支持脂質二重膜(SLB)を用いて培養細胞系と無細胞タンパク質合成系を併用して制御下での複雑化を行い、複合体としての機能構造とその際に働く分子間相互作用を明らかにする。平成28年度は培養細胞系と無細胞タンパク質合成系で得たK+チャネルを用いて以下の2つの課題に取り組んだ。 1.hERGチャネルの帰属と膜内分布の評価 培養細胞(CHO細胞)から抽出した膜画分は細胞が持つ全ての膜タンパク質および糖脂質等を含むため、どれが目的とするhERGチャネルでどの程度含まれているかを識別するために、抗hERG抗体による標識を行った。蛍光標識hERG抗体を用い、非特異的吸着を抑制しつつhERG抗体を標識できる抗体濃度とブロッキング剤などなどの実験条件の検討を行い、SLB内の膜画分ドメインのほとんどにhERGチャネルが含まれていることが示された。また、膜電位感受性色素をSLBに導入して膜電位計測を行うために、蛍光顕微鏡に実験系を構築して予備実験を行った。 2.KAT1分子構造の観察 ホモ4量体としての分子質量が約30,000 DaのKAT1について、水中AFM観察により詳細な分子構造の観察を試みた。また、KAT1はpHに依存して長時間開状態または閉状態を取ることが知られているため、溶液のpHを変化させてKAT1の分子構造観察を行った。SLB内でKAT1の4量体構造を可視化することはできなかったが、酸性条件下でKAT1クラスターが現れることを見出し、その内部構造を観察することに成功した。また、AFM観察下でpHを中性条件から酸性条件に変化させ、その前後で個々のKAT1分子を観察した。膜外領域の大きさが変化し、閉構造から開構造への変化に対応していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実施計画に記述した2つの実験課題について、上述の通り順調に研究成果を挙げることができている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度も引き続きasolectin-SLB中でのKAT1、hERGチャネル発現膜画分含有SLBの2つの実験系を用いて、AFM観察による構造および環境に依存した構造変化の観察を行う。 1. hERGチャネルの帰属と薬剤応答評価 培養細胞から抽出した膜画分をSLBに融合させて形成されるドメイン中にhERGが存在することが確かめられたので。今年度はAFM観察下でのhERG抗体の添加により、膜画分中に含まれる多数のprotrusionの中からhERGチャネル認識することを目指す。必要に応じて非特異的吸着を防ぐためにブロッキング剤を添加する。これらのhERGチャネル分子に対して、チャネル活性の阻害効果を示すことが知られている薬剤を添加することによって構造変化の有無を観察する。 2. KAT1分子構造の高分解能観察 KAT1は低pH環境下で電位刺激を印加しなくても開状態を取ることが知られている。ホモ4量体であるKAT1中でのモノマー間距離の変化などの構造変化について高分解能観察を行う。また、これまでにKAT1の膜内分子配向が膜融合過程に依存して揃うことを見出しているので、pH変化による細胞内側・外側の膜外領域の構造変化について詳細な評価を行う。 また、hERGチャネルについてはHEK293細胞による発現系および無細胞合成による発現系を研究分担者が確立したため、これらを用いてSLB系への再構成および分子像観察を行う。膜電位感受性色素を用いた実効的な膜電位の状態と合わせて、溶液および脂質膜環境に依存したKAT1およびhERGチャネルの構造変化を詳細に調べる。
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Research Products
(16 results)