2015 Fiscal Year Annual Research Report
非解離レーザー脱離機構の解明と励起空間制御による高効率法の開発研究
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15H03772
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
藤野 竜也 首都大学東京, 理工学研究科, 准教授 (20360638)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 分子脱離 / ダイナミクス / MALDI法 |
Outline of Annual Research Achievements |
開発した時間分解質量分析装置を使い、MALDI法に関係するマトリクスの脱離ダイナミクスを観測した。2,4,6トリヒドロキシアセトフェノン(THAP)を用い、チタンサファイアレーザーの第二高調波(400nm)を二つに分割し、強度の弱いポンプ光(~7microJ)により主に固体の振動を誘起させ、強度の強いプローブ光(~10microJ)によりプロトン付加によるイオン化を行い、検出されるイオン強度の時間変化を観測した。ここではポンプ光、プローブ光単独ではイオンが観測されない条件で実験を行った。その結果[THAP+H]+イオンの脱離には光励起後13.2psを要することが分かった。さらにTHAPに構造が似ている1ヒドロキシ2アセトフェノン(HAN)を同条件で実験したところ、脱離には20psを要することが分かった。分子脱離には分子間振動モードを多量子励起することが重要であることが我々の過去の研究から分かっている。THAP及びHANの2量体及び3N-6則を仮定すると分子間振動モードの数は6と等しいが、実際は分子内振動モードと不可分であり、分子内振動モード数の多いHANが多くの分子間振動モードを持つことになる。得られた結果はTHAPに比べHANが相対的に多く持つ分子間振動モードが熱浴として働くため、脱離に必要なモードの振動励起が効果的に行われずに、脱離ダイナミクスが遅くなったことを示していると考えられる。実際、HANより極めて多くの振動モードを持つゼオライトをTHAPの熱浴として使用すると、[THAP+H]+イオンの脱利が120ps程度まで遅くなることを確かめてある。 スメクタイトを利用したMALDI法を行うことで、層間距離以下の分子サイズを持つ分子のみをサイズ選択的にイオン化できる新たな手法を開発した。またアンモニア終端ゼオライトにより燐酸ペプチドが高強度に検出できることを発見した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで開発した時間分解質量分析法を利用した脱離ダイナミクスの研究に加え、スメクタイトやゼオライトなど様々な無機物質を利用した新しいイオン化法の開発にも成功している。これら開発したマトリクスが、薬物代謝物のレーザーイオン化法による測定に極めて適していることを理解した。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度行った分子脱離ダイナミクスの研究を報文にまとめる。 ゼオライトを用いて開発した新規マトリクスが、尿中薬物やその代謝物の測定に極めて適していることが最近理解されたため、その研究を発展させ尿中禁止薬物の簡易測定法の開発にまで到達させる。またペプチドやタンパクを高強度に測定できる手法を様々な観点から試みる。
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