2016 Fiscal Year Annual Research Report
骨格に重元素を含むアニオン性芳香族化合物を配位子とした遷移金属錯体の創製
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15H03774
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
斎藤 雅一 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (80291293)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 芳彦 名古屋大学, 創薬科学研究科, 教授 (60283412)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | スタンノール / プルンボール / トリプルデッカー型錯体 / ナノ粒子 / アニオン性フェロセン |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者が独自に合成したスズや鉛を含むジアニオン性芳香族化合物であるジリチオスタンノール及びジリチオプルンボールを配位子として用い、従来の炭素π電子系配位子では合成できない新しい結合様式をもつ遷移金属錯体を創製し、その新しい電子状態さらにはこれに基づく新しい物性を解明することを目指している。 今回、昨年度合成に成功したルテニウム-スズ-ロジウムからなるヘテロバイメタリックトリプルデッカー型錯体を用いて、ルテニウム-スズ-ロジウムの三金属による新しいナノ粒子の合成に成功した。また、ルテニウム-スズ-ルテニウムからなるトリプルデッカー型錯体と銀イオンとの反応を検討したところ、予想外にも酸化反応は進行せず、スズ上の孤立電子対が銀イオンに配位した錯体を得た。このことに着想を得て、次に金属カルボニルとの反応を検討したところ、スズが遷移金属に配位することがわかった。これは、スズ上の孤立電子対に配位能があることを示している。つまり、この錯体が逆供与を受けないスタンニレンとして機能していることを示しており、遷移金属のπ配位により逆供与を阻止するという新しい例である。 また、先に合成したアニオン性フェロセンの電気化学的及び磁気的特性を調べた。サイクリックボルタンメトリーによる測定では可逆な一電子酸化波が観測され、この錯体の一電子酸化状態が安定であることが示唆された。この成果を発表した学会において、ポスター賞が授与された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ルテニウム-スズ-ロジウムからなる新しいナノ粒子の合成や、ルテニウム-スズ-ルテニウムからなるトリプルデッカー型錯体が予想外にも新しいタイプの逆供与を受けないスタンニレンとして機能することを明らかにした。さらに、アニオン性フェロセンの解釈が難しい電気化学的及び磁気的特性の解明に迫りつつある。本成果の発表に対して、学会のポスター賞が授与された。従って、研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
ルテニウム-スズ-ルテニウムからなるトリプルデッカー型錯体と金属カルボニルとの錯体の酸化反応を検討し、新しい混合原子価状態の構築を目指す。また、アニオン性フェロセンの磁気的特性を実験および理論の両面から明らかにする。
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Research Products
(7 results)