2016 Fiscal Year Annual Research Report
ナノサイズ空孔型反応場を活用した高反応性アミノ酸誘導体モデルの開発
Project/Area Number |
15H03776
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
後藤 敬 東京工業大学, 理学院, 教授 (70262144)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 有機化学 / 酵素モデル / 活性中間体 / アミノ酸 / 合成化学 / セレノシステイン / セレネン酸 / 抗酸化酵素 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、酵素の活性部位の構造的特性を採り入れた巨大分子キャビティを開発し、このキャビティを活性中間体の保護空間"クレードル"として活用することで、内部に高反応性アミノ酸部位を導入した酵素活性部位モデル("クレードルドアミノ酸")を構築することを目的としている。本年度は、前年度に開発した、内部にセレノシステインユニットを有する"クレードルドセレノシステイン"を活用することで、重要な抗酸化酵素であるグルタチオンペルオキシダーゼ(GPx)の活性中間体に関するモデル研究を行った。GPxの触媒サイクルについては、セレノシステインセレネン酸(Sec-SeOH)を中間体とする機構が広く受け入れられているが、Sec-SeOHを直接観測した例は未だに報告されていない。今回、"クレードルドセレノシステイン"骨格をもち、C末端側がメチエルエステル部をもつセレノールSec-SeHの酸化によるSec-SeOHの生成について検討した。Sec-SeOHの過酸化水素による酸化について反応条件を精査した結果、塩基性条件下、低温で酸化反応を行うことにより、Sec-SeOHを良好な収率で生成させ、77Se NMRで観測することに成功した。これは、生体系および合成系を問わず、Sec-SeOHを直接観測した初めての例であり、GPxの触媒機構を化学的に解明する上で重要な知見といえる。前年度、第一級アルキル置換モデルを活用することで、ヨウ化セレネニルの加水分解によるセレネン酸の生成を実験的に示すことにはじめて成功しているが、この発生法による検討も行った。対応するセレノシステインヨウ化セレネニルSec-SeIのアルカリ加水分解を低温下で行ったところ、Sec-SeHの酸化で得られたものと同じSec-SeOHが高収率で生成し、77Se NMRで観測された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Sec-SeOHは、GPx触媒機構の重要な中間体として1970年代から提唱されていながら、直接観測された例は全くなかった。今回、本研究で開発した高反応性アミノ酸誘導体モデルを活用することで、Sec-SeOHの77Se NMRによる直接観測をはじめて達成した。また、前年度、第一級アルキル置換モデルを活用することで、ヨウ化セレネニルの加水分解によるセレネン酸の生成を実証することに成功しているが、この反応をセレノシステインモデルにも適用し、Sec-SeOHの高収率での生成に成功するなど、順調な進捗状況といえる。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に得られた知見に基づき、よりの活性部位の環境に近い部分構造をもつ"クレードルドセレノシステイン"を開発し、含セレン酵素のモデル研究を進める。具体的には、C末端側にアミドユニットをもつモデル系を開発し、GPxについて生化学の分野で最近新しく提唱された触媒機構について化学的検証を行う。また、硫黄類縁体である"クレードルドシステイン"を用いた酵素モデル研究についても検討する。
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Research Products
(18 results)