2015 Fiscal Year Annual Research Report
高周期14族元素低配位化合物を活用した小分子変換・多成分連結反応の開拓
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15H03777
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
笹森 貴裕 京都大学, 化学研究所, 准教授 (70362390)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ジゲルミン / エチレン / アセチレン / ジゲルマシクロブテン / ジゲルマベンゼン / [2+2]付加環化反応 / [2+2+2]付加環化反応 / C-C結合形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、高周期典型元素の特性を熟知した上で、特に高周期14族元素二価化学種および多重結合化学種の性質を活用した精密な分子設計により、これまで遷移金属元素でしか為しえなかった、あるいは遷移金属元素でも為しえない有用な有機合成反応の開発を目的とする。最終的には「典型元素触媒」の開発を目指しているが、まずはその基盤となる小分子の変換、多成分連結反応を基本として詳細に検討することとした。 本年度は、既報の安定なゲルマニウム間二重結合・三重結合を活用したエチレンおよびアセチレンの修飾を検討することとし、かさ高い置換基を有する安定なジゲルミン(ゲルマニウム間三重結合化合物)とエチレンおよびアセチレンとの反応を検討した。立体保護基としてBbt基(2,6-[CH(SiMe3)2]2-4-[C(SiMe3)3]-C6H2)を有するジゲルミンに対してエチレンを作用させたところ、速やかに[2+2]付加環化反応が進行し、対応する1,2-ジゲルマシクロブテンが得られた。これに対し、さらに種々のアルケンを反応させることにより、Ge=Geが開裂した付加生成物などが得られた。一方、Tbb基(2,6-[CH(SiMe3)2]2-4-t-Bu-phenyl)を有するジゲルミンに対し、アセチレンを作用させたところ、二分子のアセチレンとの反応が速やかに進行し、[2+2+2]付加環化生成物である、1,2-ジゲルマベンゼンが安定な黄色結晶として得られた。これはすなわち、ジゲルミンを基盤としたC-C結合形成反応と言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
ジゲルミンに代表されるような、高周期14族元素間不飽和結合化合物は、水や酸素、あるいはカルボニル化合物などと容易に付加反応が進行し、付加生成物を与えることが知られていた。しかし、今回条件を整えることにより、炭素の系では禁制であるとされる[2+2]付加環化反応が熱的に速やかに進行し、対応する環状化合物を与えることが分かった。さらに、得られた生成物も、反応活性なGe=Ge不飽和結合を有しており、さらなる他の小分子との反応が期待できる。また、アセチレンとの反応に見られる様に、実際これらの反応性によりC-C結合形成反応が進行し、初めてのジゲルマベンゼンの合成が達成されたことは、様々な観点から大きな成果であると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
これらの反応機構を精査し、ゲルマニウムに代表される高周期14族元素多重結合化学種の反応性に関する基盤を築き、エチレンおよびアセチレン類の分子修飾への活用を検討する。まずはゲルマニウム間三重結合化合物とエチレンおよびアセチレンとの反応により合成した反応中間体であるジゲルマシクロブテンおよびジゲルマシクロブタジエン、ジゲルマベンゼンを単離・精製し、これらに対し、反応基質として、異なるエチレン、アセチレン、カルボニル化合物、アミン類などとの反応を行うことで、多成分連結反応の基盤を築く。理論化学と実験化学の両面から反応機構を詳細にあきらかとすることにより、ゲルマニウム以外の元素、ケイ素やスズへの展開を模索する。
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Research Products
(8 results)