2016 Fiscal Year Annual Research Report
高効率・低減衰な電子トンネリングを示すπ共役分子ワイヤの合理的設計と合成
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15H03794
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
松田 建児 京都大学, 工学研究科, 教授 (80262145)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 分子コンダクタンス / 電子トンネリング / 分子ワイヤ / 交換相互作用 / π共役系 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、まず、ジアリールエテンの光スイッチングに伴うラジカル間交換相互作用(J)と一次の超分極率(β)の変化についてDFT計算を用いて検討することにした。5,5'-diphenyl-di(3-thienyl)ethene 1、5,5'-diphenyl-di(2-thienyl)ethene 2、2,5-diphenyl-di(3-thienyl)ethene 3について検討を行った結果、分子2のスイッチング方向は、分子1の反対であることが分かった。分子3のスイッチング方向は、Jの変化に関しては分子1と反対であったが、βの変化に関しては同じであった。すべての分子において、βの変化割合はJの変化割合より小さかった。また、チオフェン部分を酸化してS,S-ジオキシドにした場合も、上記の結果には大きな違いは見られなかった。本研究により、Jとβの光スイッチングの基本動作原理を明らかにすることができた。 また、昨年度までに計算により明らかになった、オレフィンワイヤにおける交換相互作用の小さい減衰定数を実証するために、オリゴチオフェン-S,S-ジオキシドの減衰定数を実験的に求める試みを行った。交換相互作用をESRスペクトルの線形のシミュレーションから求めるための分子設計指針についてまず検討した後に、ベンゼン環とチオフェン環の交換相互作用の違いについて検討し、チオフェン環の方がベンゼン環に比べて相互作用が大きいことを明らかにした。今後チオフェン-S,S-ジオキシドについて検討を行い、減衰定数の違いについて定量的に比較する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究目的である、高いON/OFF比でスイッチングを示すπ共役分子ワイヤの設計指針に関しては、各種ジアリールエテンについて検討することにより一定の目標は達成されている。また、小さな減衰定数をもつπ共役系ワイヤの設計指針に関しては、オリゴチオフェン-S,S-ジオキシドのようなオレフィンワイヤが小さい減衰定数を持つことを示した。しかし、上記を超える分子設計指針についてはまだ未解明の部分があり、さらなる検討が望まれる。
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Strategy for Future Research Activity |
高いON/OFF比でスイッチングを示すπ共役分子ワイヤの設計指針、小さな減衰定数をもつπ共役系ワイヤの設計指針の2点に関しては、分子エレクトロニクスにおいて非常に基礎的かつ重要な分子設計指針であるために、本研究で明らかになったこと以上にさらなる検討を行う予定である。
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Research Products
(4 results)