2016 Fiscal Year Annual Research Report
分子凝集状態で高効率発光する蛍光ならびに室温リン光材料の創製と機能開発
Project/Area Number |
15H03795
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
清水 正毅 京都工芸繊維大学, 分子化学系, 教授 (10272709)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 蛍光 / リン光 / 分子凝集 / 発光材料 |
Outline of Annual Research Achievements |
固体状態において効率良く発光する蛍光発光団として、2,5-ジアミノテレフタル酸ジチオエステルを開発した。このジチオエステルは、溶液状態ではほとんど発光しないのに対し、粉末や結晶状態になると、橙色から赤色の蛍光を量子収率0.36~0.55で発光した。そして、ほぼ発光しないTHF溶液(量子収率0.03)に水を添加していくと、水の存在比が70%を超えるにしたがい、蛍光発光強度が急激に強くなり、量子収率0.14で橙色発光することがわかり、このジチオエステルが凝集誘起発光性を示す発光団であることを明らかにした。また、対応するエステルが黄色発光することと比較すると、エステル部位のカルコゲン元素を酸素から硫黄に代えるだけで、固体発光色を大幅に長波長シフトできることが示された。 蛍光発光団に加えて、室温リン光発光団として、1,4-ジベンゾイルベンゼン-2,5-ジシロキシベンゼンを開発することに成功した。すなわち、このベンゼン誘導体は、結晶状態において高効率(量子収率0.46~0.64)で緑色リン光を室温で示すことを明らかにした。加えて、その発光寿命が100ミリ秒オーダーと、室温リン光として極めて長いこともわかった。高効率発光が実現している要因の一つとして、励起三重項状態における、エーテル酸素のラジカルと隣接するシリル基の炭素―ケイ素結合のσ軌道とのσ-n共役による安定化を提唱した。 また、昨年から検討を進めている発光性イオン液体の創製については、ピリジニウム塩含有ビス(アリールエテニル)ベンゼンを非対称構造とし、電子供与基にシロキシ基を用いると、室温で液体の蛍光発光団が得られることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ジアミノジチオエステルの発光団の開発は、発光分子に含まれるヘテロ原子を2カ所、周期表の一つ下の元素原子に代えるだけで、固体状態における発光色を大きく変化させることができることを示している。他の発光団設計にも活用することが望まれる分子改良の発想である。また、長波長領域での分子凝集状態における高効率発光は、生体イメージングやセンシングへの利用が期待される有用な特性である。 一方、レアメタルを含まずにこのような高効率発光を示すリン光材料は、これまでに数例しかない。また、高効率と長寿命発光をこのレベルで同時に実現しているリン光材料は、これまでに例がない。長寿命発光は、発光センシングにおいて、時間分解によってバックグラウンド発光や自己吸収などの影響を排除することができるため、高分解能の獲得に繋がるメリットともたらす特性であり、今回開発したリン光材料には、そうした応用の可能性が大いに期待できる。 以上のことから、本研究は概ね順調に進展していると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
強発光性蛍光発光団として、側方に電子供与基や電子求引基を有するD-pi-A型ビフェニル誘導体、2,5-ジアルコキシテレフタル酸ジエステル、および4,5-ジアミノフタル酸イミドの創製に取り組む。 室温リン光性を発現させる助色団として、シリルメチルオキシ基の検討を進める。また、電子受容基としてアルコキシカルボニル基、アリールスルホニル基、1,2-ジカルボニル基などを活用するレアメタルフリー室温リン光材料を開発する。 ピリジニウム塩含有ビス(アリールエテニル)ベンゼンを基盤とする発光性イオン液体の分子設計方針が固まったので、それを基軸にして発光色の制御や発光効率の向上を進める。
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Research Products
(7 results)