2016 Fiscal Year Annual Research Report
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15H03801
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
中西 尚志 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点, グループリーダー (40391221)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 液体 / π共役分子 / 相転移 / 過冷却液体 / エンタルピー緩和 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者独自の分子設計であるアルキル化π共役分子で構成される機能性液体分子に関して、液体相の物性理解は不十分であり、液体材料設計をより効果的にするための戦略が求められる。本研究では、分子性液体としての本質(物性)の理解と過冷却状態およびエンタルピー緩和現象の制御を行い、新たな液体分子材料の設計へフィードバックする。 H28年度は、アルキル化フラーレン誘導体の相転移挙動で観測されたガラス転移のエンタルピー緩和の理解と制御を検討した。具体的には、様々なアルキル鎖長のアルキル基置換PC61BM誘導体を合成し、加熱アニーリング処理後、過冷却液体となった状態で長期間保存後、DSC測定において観測されるガラス転移のピーク化(エンタルピー緩和現象)を詳細に調査した。その結果、本エンタルピー緩和現象は、特定長以上のアルキル鎖を導入したPC61BM誘導体では共通の現象であり、フラーレン間の相互作用が導入アルキル鎖により抑制され、系のアモルファス性が増加することに起因することが分かった。また、過冷却状態からの結晶化は顕著には観測できず、熱溶融後のバルク状態における結晶化が、系の極めて高い粘性により阻害されていることが分かった。 乱雑さの増した状態では、光導電性の向上は期待できず、実際に光電導度を計測し、さらには太陽電池セルを組んでみたが、アルキル基置換無しのPC61BMの性能の半分以下となった。 また、アルキル化フラーレン誘導体に制限せず、H27年度に取り組んだアントラセン液体、ピレン液体に関しても、エンタルピー緩和現象の有無など、詳細に検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度に計画したアルキル化フラーレン誘導体の相転移挙動の詳細な解析においては、十分な取組を行うことができた。一方で、π共役部位の光導電性機能を向上させることがこの過冷却状態の制御によって達成されるかといった課題に関しては、アモルファス性の増加による負の要因が明らかとなった。また、同分子群、特に有機半導体の分子群へのアモルファス性の誘起、熱アニーリング処理操作などへの考え方、注意すべき点を明確に浮き彫りにできたことは当該分野においては重要な知見を得たことになる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究取組では、アモルファス性の増加による組織構造、相転移挙動への影響などを重点的に検討した。アモルファスなアルキル-π分子内に直接アルキルもしくはπ分子成分を微量加えることで、分子の再配向を誘起できると推測する。デバイス加工時にはより溶解性が高く、熱溶融も可能なアモルファス状態で処理し、π成分ないしアルキル成分の添加により、分子を再配向させる新しい自己組織化技術も達成可能と考える。π成分においては、p型半導体性の分子を採用することで、BHJ相の最適化p-n界面構造の制御に貢献できると期待する。
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Research Products
(20 results)