2015 Fiscal Year Annual Research Report
銅(I)触媒および塩基触媒を用いた高度に官能基化された有機ホウ素反応剤の合成
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15H03804
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
伊藤 肇 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90282300)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石山 竜生 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00232348)
関 朋宏 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (50638187)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 不斉合成 / 有機ホウ素化合物 / 脱芳香族化反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
医薬品合成などに応用可能な有用合成中間体である、キラル有機ホウ素化合物や芳香族ホウ素化合物を効率よく合成する方法を多数開発することに成功した。 1.インドール類のエナンチオ選択的脱芳香族ホウ素化反応に世界で初めて成功した。光学活性銅(I)触媒を用いると、光学活性ホウ素化インドリンが高収率かつ高エナンチオ選択的に得られた(Angew. Chem. Int. Ed. 2015, 54, 8809)。2.アルケニルケトンの高選択的環化ホウ素化に成功した。他の方法では合成がむつかしいシクロブタニルホウ素化合物が高立体選択的に得られた(Synlett, 2015, 272)。3.ヘテロ芳香族化合物のシリルボランによるホウ素置換反応を報告した。塩基触媒存在下で、反応がスムーズに進行し、対応する芳香族有機ホウ素化合物が高集率で得られた。また、アルケニルハライドに同様の反応を適用してみたところ、立体保持で反応が進行し、対応するアルケニルホウ素化合物が高収率かつ高選択性で得られた(Chem. Sci. 2015, 6, 2943)。4.ピリジン類の光学活性銅(I)触媒による不斉脱芳香族ホウ素化反応を検討し、ピリジニウム塩からの部分還元によって生じた基質から、高エナンチオ、ジアステレオ選択的にホウ素化反応が進行することが明らかになった。この反応では、対応する光学活性置換ピロリジンが得られ、抗うつ剤の一種である(-)-Paroxetineの短段階合成に成功した(J. Am. Chem. Soc. 2016, 138, 13, 4338)。5.末端アルケンのマルコフ型ヒドロ(プロト)ホウ素化の開発に世界で初めて成功した(Chem. Commun. 2016, accepted)。今回、オリジナルの触媒を開発することにより、マルコフニコフ型のホウ素化を実現した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
わずか一年間のうちに、下記の五項目にわたる新反応、新発見を達成したことは特筆に値する。これらは海外一流紙に掲載されており、そのレベルの高さを示している。 1.インドール類のエナンチオ選択的脱芳香族ホウ素化反応に世界で初めて成功した。2.アルケニルケトンの高選択的環化ホウ素化に成功した。3.ヘテロ芳香族化合物のシリルボランによるホウ素置換反応を報告した。4.ピリジン類の光学活性銅(I)触媒による多段階不斉脱芳香族ホウ素化反応に成功した。抗うつ剤の一種である(-)-Paroxetineの短段階合成に成功した。5.末端アルケンのマルコフ型ヒドロ(プロト)ホウ素化の開発に世界で初めて成功。末端アルケンのヒドロホウ素化は、通常アルケンの末端にホウ素が導入されるアンチマルコフニコフ型の反応が進行する。一方、芳香族アルケンでは、アルケンの内部にホウ素が導入されるマルコフニコフ型のヒドロホウ素化が進行することが知られていたものの、脂肪族アルケンでは例がなかった。 (J. Am. Chem. Soc. 2016, 138, 13, 4338; Chem. Commun. 2016, accepted; Synlett 2015, 26, 2, 272; Angew. Chem. Int. Ed. 2015, 54, 8809; Chem. Comm. 2015, 51, 9655; Chem. Sci. 2015, 6, 2943)とくにJ. Am. Chem. Soc. 2016, 138, 13, 4338に関しては、ACSの月間most read paperとなった(トップ20)。また、Angew. Chem. Int. Ed. 2015, 54, 8809に関しては、Synfacts 2015, 11, 840 でハイライトされた。以上のような結果は、当初の予想を大きく超えている。
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Strategy for Future Research Activity |
1. 脱芳香族ホウ素化反応の展開:芳香族化合物は、入手が容易かつ、安価であるため、これを原料とする不斉合成は有望である。本年度の研究で、不斉脱芳香族ホウ素化反応が実施可能であることが初めて明らかになったので、今後はこの反応さらなる展開を図り、他の芳香族化合物に対して同様の不斉ホウ素化を実施する。 2. 末端アルケンのマルコフニコフ型ホウ素化反応の展開:アルキル末端アルケンの不斉ホウ素化が初めて実現したが、現状では生成物はラセミ体である。適切な不斉配位子をデザインすることにより、光学活性ホウ素化物が得られるような反応系を開発し、光学活性アルキルホウ素化合物の新しい合成方法を確立する。 3. シリルボラン/塩基ホウ素化系の展開:新しいシリルボランを開発し、ホウ素化反応のさらなる展開を図る。 4. ラジカル反応を経由した環化ホウ素化反応を開発する。
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Research Products
(11 results)