2016 Fiscal Year Annual Research Report
銅(I)触媒および塩基触媒を用いた高度に官能基化された有機ホウ素反応剤の合成
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15H03804
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
伊藤 肇 北海道大学, 工学研究院, 教授 (90282300)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石山 竜生 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (00232348)
関 朋宏 北海道大学, 工学研究院, 助教 (50638187)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 不斉合成 / 有機ホウ素化合物 / 脱芳香族化反応 / DFT計算 |
Outline of Annual Research Achievements |
医薬品合成などに有用な合成中間体である、多数のキラル有機ホウ素化合物や芳香族有機ホウ素化合物の効率の良い合成法の開発に成功した。 1. キノリン化合物の脱芳香族・不斉ホウ素化に成功した(Adv. Synth. Catal. 2016, 358, 15, 2379)。芳香族化合物であるキノリンの部分還元を経る不斉ホウ素化に成功し、更に生理活性化合物であるSumanirole の前駆体の高効率合成に成功した。2. 塩基触媒による、アリールハロゲン化物の直接ホウ素化によって、トリアリールボランを合成することに成功した(Chem. Eur. J. 2016, 22, 17547)。ジアリールシラン化合物に塩基を作用させることで活性化し、有機ハロゲン化物へ直接ジアリール基を導入することに成功した。3. ビニルアシラール、ビニルアミナールの銅(I)触媒によるホウ素化(Synlett 2016, 28, 270; Synlett 2017, accepted)。 ビニルアシラール、ビニルアミナールのホウ素化反応により、これまで合成が難しかったγ位に官能基を持つアリルホウ素化合物を合成することに成功した。4. ケトンの不斉ホウ素化(Angew. Chem. Int. Ed. 2017, accepted)。光学活性銅(I)触媒によるケトンの不斉ホウ素化を世界で初めて報告した。5. DFT計算を用いたアルデヒドの不斉ホウ素化における反応機構の検討(Organometallics 2016, 35, 1376)。昨年度報告したアルデヒドの不斉ホウ素化反応の反応機構をDFT計算を用いて検討し、エナンチオ選択性が発言するメカニズムについて明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
わずか一年のうちに、多数の新しいホウ素化反応を開発できたことは特筆に値する。結果の多くが海外一流ジャーナルに掲載されており、高いレベルの研究成果が得られている。1. 銅(I)触媒による脱芳香族化反応では、去年までのインドールとピリジンに加えて、キノリンに対してこの方法が成功したことは、本方法の一般性の高さを明確に物語っている、塩基触媒によるシリルボランを用いたホウ素化では、これまでピナコールボランの導入しかできなかったが、今回の成果では、同じスタラテジーで、有機材料として有用なトリアリールボランが合成できることが示され、その価値が非常に高まったといえる。カルボニル化合物のホウ素化においても、昨年度成功したアルデヒドに比べて、一般的には遥かに難易度が高いと考えられる脂肪族ケトンの不斉ホウ素化に成功したことは、予測を越えた成果であると言える。それぞれの項目で目標以上の成果が得られている。また、DFT計算による反応機構の解明にも成功したことは今後の研究の方向性を明確にする上で、大きな成果である。
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Strategy for Future Research Activity |
下記の1および2を中心に研究をすすめる 1. イミンのエナンチオ選択的モノホウ素化反応の開発:α位にキラルなアミノ基を持つアルキルホウ素化合物は、多発性骨髄腫治療薬であるBoltezomib(Vercade)の生理活性を司る重要な官能基であることがわかっているなど、近年注目されているが、その触媒的不斉合成方法は開発されていない。昨年度までの研究で開発したアルデヒド、ケトンの不斉ホウ素化反応の開発で得られた知見を活かして、イミンのエナンチオ選択的不斉ホウ素化反応の開発を検討、非環状イミン、環状イミンの不斉ホウ素化を達成する。得られたイミンは、誘導反応により、対応する多環式光学活性アミンへ変換する。 2.アリルケタールのエナンチオ選択的不斉ホウ素化:本年度までの研究で、アリルアセタール、アリルアシラール、アリルアミナールのホウ素化に成功した。更に難易度の高いアリルケタールのホウ素化を試み、対応する官能基化アリルホウ素化合物の合成方法を確立する。 さらに二年間の研究で得られた知見をもとに以下の研究を追加で検討する。 3. 含フッ素有機ホウ素化合物の合成法の開発。4. ラジカル環化による新規ヘテロ環状有機ホウ素化合物の合成法の確立。5. 末端アルケンの不斉ホウ素化
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Research Products
(15 results)