2016 Fiscal Year Annual Research Report
複核金属錯体と非共役ジエンとの親和性を活用したハシゴ型ポリオレフィンの創製
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15H03814
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
竹内 大介 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 准教授 (90311662)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 複核錯体 / ポリオレフィン / 共重合体 / ハシゴ型高分子 / ネットワークポリマー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、ジビニルモノマーとエチレン、オレフィンとの共重合により、これまで全く例のないハシゴ型ポリオレフィンを創製することである。複核金属錯体を重合触媒として用いることで、ジビニルモノマーの二つの金属中心への効率的な配位・挿入を促進し、ジビニルモノマーを架橋部位として高分子中に取り込ませる。 昨年度はエチレンとアクリル酸無水物との共重合について検討を行い、複核パラジウム錯体を用いた場合には単核錯体に比べてアクリル酸無水物の導入率が向上することを見出した。しかし、アクリル酸無水物は主に環状酸無水物構造として共重合体中に導入されていた。 本年度はエチレンとジビニルベンゼンとの共重合について検討を行った。複核パラジウム錯体および単核パラジウム錯体を用いてエチレンとスチレンとの共重合を行った場合には、スチレンはほとんどポリマー中に導入されず、共重合体の収量も低かった。一方、複核パラジウム錯体を用いてエチレンとジビニルベンゼン(o-, p-の混合物)の共重合を行った場合には、ジビニルベンゼン由来の繰り返し構造を含む共重合体が得られた。p-ジビニルベンゼンをコモノマーとして用いた場合には、一方のビニル基のみが反応し、他方のビニル基が側鎖に未反応で残存した共重合体が得られたが、p-ジビニルベンゼンをコモノマーとして用いた場合にはほとんど未反応のビニル基は残っていなかった。得られた共重合体は有機溶媒に可溶であり、ハシゴ型構造を有していることが示唆される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
複核錯体を用いたエチレンとジビニルベンゼンとの共重合において、共重合体が効率よく得られることが分かった。エチレンとスチレンとの共重合がほとんど進行しないことから、複核錯体と二官能性モノマーとの組み合わせが重要であることも分かった。モノマーの二つのビニル基の距離も重要であることが明らかとなり、特にm-置換体の場合にはハシゴ型高分子が得られた可能性があることが分かった。さらに、p-置換体は反応性のビニル基をもつ共重合体を与えることも興味深い結果であると言える。 一方で、様々な官能基をもつジビニルベンゼンの利用や、得られた高分子のハシゴ型ならではの物性については明らかにするには至らなかった。 以上のように、予定していた研究計画の一部は検討するには至っていないが、おおむね当初の研究計画通りに進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
電子供与性・電子求引性置換基をもつp-およびm-ジビニルベンゼンを合成し、それらをコモノマーとして用いた共重合について検討する。反応温度やエチレン圧、ジビニルベンゼンの濃度や溶媒量など、系統的に検討を行い、それぞれの条件で得られたポリマーの構造を明らかにする。得られたポリマーの構造解析や高分子反応などを利用することで、ハシゴ型構造をとっていることを確かめる。また、熱物性を調べることで、ハシゴ型高分子ならではの物性を明らかにする。
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Research Products
(11 results)