2016 Fiscal Year Annual Research Report
大面積で一義的に配向したキラルな共有結合フレームワークの機能開拓
Project/Area Number |
15H03820
|
Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
石田 康博 国立研究開発法人理化学研究所, 創発物性科学研究センター, チームリーダー (20343113)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 液晶 / 有機ゼオライト / キラリティ / 配向 / 多孔性材料 / 非線形光学 |
Outline of Annual Research Achievements |
応募者が継続してきた研究の不連続的な発展として、一昨年度「~10 cm2の大面積でキラル空孔が一義的に配向した多孔性高分子フィルム」を得る手法を確立した。この新材料は、従来の多孔性材料に欠けていた要素を全て兼備する、極めて興味深い研究対象である。また、放射光X線を用いた昨年度の検討により、この材料の分子レベルでの詳細構造が明らかとなった。すなわち、空間群P6122の六方格子の中では、カルボン酸が6回軸に沿って集積した二重らせん構造を取り、二重らせんが作るチャネル中には、アミンがやはり二重らせんに沿って配列する。 一方で非線形光学効果は、次世代光エレクトロニクスの鍵技術として注目される。大きな双極子を持つ色素はしばしば顕著な非線形光学効果を示すが、これら色素が非線形光学効果を示ためには、非対称な構造に配置される必要がある。また、得られる非線形シグナルのコヒーレンス性を高めるためには、色素分子の規則配列における欠陥や粒界を抑える必要がある。このような理想構造を得るための一般法は存在しないが、今回我々が開発した多孔性高分子フィルムは、空孔中に色素分子を吸着させるだけで、非線形光学効果発現の理想構造を作り出す万能テンプレートとなると期待される。 そこで、典型的な非線形光学色素であるp-ニトロアニリンの誘導体を多孔性高分子フィルムに導入し、得られる複合体の非線形光学効果を調べた。例えば波長800 nmのレーザー光を入射したところ、波長400 nmの発光が観測される、いわゆる二次の非線形光学効果が観察された。興味深いことに、巨視的配向構造を持たない参照用のフィルムを作成し、その非線形光学効果の強度を調べたところ、今回のフィルムの10%強度の非線形光学効果しか観察されなかった。今回のフィルムの巨視的配向構造のために出力される光の相互干渉が抑えられ、コヒーレンス性が向上したと考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究計画時点から、非線形光学効果が観察されるところまでは予想していたが、巨視的な配向構造のためにその強度が通常の10倍増強され、本法の有用性が顕著に示されたため。
|
Strategy for Future Research Activity |
キラル化合物の分離は、人類が医薬品を使う限り必要される永遠の課題である。また、キラル対称体の物理的性質は全く同じであるため、最も難易度の高い物質分離である。これまでに結晶化法・酵素法・クロマトグラフィー法など、様々なキラル分離法が開発されているが、それぞれに得手不得手があり、環境負荷・最適化労力・スケールアップ容易性の全てに優れる方法は無い。今回得られた多孔性高分子フィルム限定された結晶面を外界に露出し、なおかつ、粒界や欠陥による構造乱れのない巨視配向したフィルム構造は、従来のキラル分離媒体とは次元の違う分離効率を達成するはずである。 上記の可能性を探るべく、まずはプロトタイプ基質を用いた検討を行う。すなわち、キラル分離の対象となるプロトタイプ基質として、多孔性高分子フィルムを合成する際に用いた鋳型アミンとその鏡像異性体との等量混合物を用いる。両異性体を競争的な条件下にて多孔性高分子に吸着させた後、吸着されたアミンの光学純度をキラル高速液体クロマトグラフィーにより評価する。また、同じナノ構造よりなる粉末サンプルのキラル分離も併せて評価し、巨視的配向構造の有用性を明らかとする。これらの知見を得たのち、このプロトタイプの類縁体を鋳型として用いて多孔性高分子フィルムを作成し、同様の手法でキラル分離能を評価することにより、本キラル分離法の一般性を検証する。
|
Research Products
(6 results)