2017 Fiscal Year Annual Research Report
Electrophoresis of Biopolymer using Supramolecular Hydrogel
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15H03826
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
山中 正道 静岡大学, 理学部, 准教授 (10377715)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ゲル / 自己集合 / 電気泳動 / 超分子 / タンパク質 / 核酸 / 化学架橋 |
Outline of Annual Research Achievements |
タンパク質や核酸類などの生体高分子の分離分析手法として、ゲル電気泳動は広く利用される分析技術である。電気泳動の支持体には、ポリアクリルアミドまたはアガロースが広く用いられおり、それ以外の支持体を用いた電気泳動の報告例は皆無であった。我々は、生体高分子の電気泳動に適用可能な新規な支持体として、超分子ヒドロゲルに着目した。低分子ヒドロゲル化剤の水中での自己集合により形成する超分子ヒドロゲルは、分子設計に応じ様々に機能化することができる。そのため、超分子ヒドロゲルを支持体とした電気泳動法の確立は、生体高分子の分離分析手法の新機軸となり得る。我々はこれまでに、独自の分子設計に基づく低分子ゲル化剤の開発に加え、超分子ヒドロゲルを支持体とした、変性タンパク質および酸性未変性タンパク質の電気泳動法の開発を達成している。これらを基盤とし、本研究では、変性タンパク質の超分子ヒドロゲル電気泳動における界面活性剤の濃度効果、超分子ヒドロゲルを支持体とした塩基性未変性タンパク質の電気泳動法の開発、超分子ヒドロゲルを支持体とした核酸類の電気泳動法の開発を実施する。また、これらの検討と並行し、電気泳動の支持体としてより適切な超分子ヒドロゲルの開発を行う。具体的には、既存の電気泳動に用いられるポリアクリルアミドやアガロースに匹敵する物理的強度を有する超分子ヒドロゲルの開発、市販の化合物から極めて短工程で合成できる新規低分子ヒドロゲル化剤の開発を実施する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに、超分子ヒドロゲルを支持体とすることで、大きなDNA断片が一般的なサブマリン型電気泳動装置を用いた電気泳動法にて分離可能であることを明らかにしていた。平成29年度は、超分子ヒドロゲルを支持体とした、大きなDNA断片の電気泳動の条件を最適化した。種々のDNAマーカーにおける超分子ヒドロゲルの濃度、電圧、電気泳動時間の調整を行い、これらの条件が分離に与える影響を明らかにした。 また、超分子ヒドロゲルを支持体とした生体高分子の電気泳動では、超分子ヒドロゲルの脆弱さがその操作を煩雑にする原因となっていた。自己集合により形成する超分子ヒドロゲルの物理的強度の弱さは本質的な性質であるが、これを解消する新規な手法として超分子ヒドロゲルへの化学架橋点の導入による超分子ヒドロゲルの高強度化を検討した。低分子ヒドロゲル化剤を適切なリンカーで結合させた二量体を超分子ヒドロゲルに添加したとき、この二量体が超分子ヒドロゲルの化学架橋点として機能すると考えた。我々が独自に開発した両親媒性トリスウレア低分子ヒドロゲル化剤の化学構造を基盤に、二分子のウレア誘導体をオクタエチレングリコール鎖で連結した二量体を合成した。両親媒性トリスウレアと二量体の混合物より超分子ヒドロゲルを調整し、その物理的強度をレオメーターにより評価した。超分子ヒドロゲルの貯蔵弾性率は、二量体の添加により約1.5倍向上することが明らかとなった。さらに、超分子ヒドロゲルの物理的強度の弱さの原因の一つである、ひずみ刺激に対する耐久性が大きく向上することも明らかとなった。例えば、超分子ヒドロゲルに5%の二量体を添加することで、貯蔵弾性率と損失弾性率が交差するひずみが5%から20%まで伸長させることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究により、超分子ヒドロゲルが生体高分子の電気泳動における支持体として適用可能であることが明らかとなった。タンパク質の電気泳動では、ポリアクリルアミドでは見られない分離様式や効率的な試料回収が実現できた。DNAの電気泳動では、これまで専用の装置での電気泳動が必要であった大きな試料であっても汎用の電気泳動装置で分離ができることを明らかにした。一方で、こうした研究に用いた超分子ヒドロゲルの根本的な問題点として、その合成手順の煩雑さが挙げられる。そこで、本年度は短段階で合成可能な新規な低分子ヒドロゲル化剤の構造探索を中心に研究を展開する。 低分子ヒドロゲル化剤の構造は、両親媒性分子であることが多い。それらの合成は疎水部、親水部のそれぞれの合成、疎水部と親水部の連結に加え、各官能基の保護脱保護などの工程を含むため多段階となる。本研究では、疎水部、親水部それぞれの合成を極限まで簡素化し、かつ保護基を用いることのない合成戦略を採用することで、短工程で合成可能な低分子ヒドロゲル化剤の候補分子を開発する。疎水部にはこれまでの低分子ゲル化剤開発での知見の蓄積があるウレイド基を採用する。親水部には構造の多様性に富む糖を用いることとした。無保護の糖を親水基として用いることができれば、市販の試薬を適用できるため合成の工程数の低減に大きく寄与することができる。無保護の糖を疎水部に導入できる反応として、アミノ基との反応によるアミノグリコシル化反応に着目した。アミノ基を有する疎水部と糖の反応により、両親媒性ウレアが市販の化合物から三工程以内で合成できる。様々な疎水部、様々な糖親水部を有する両親媒性ウレアを合成し、低分子ヒドロゲル化剤として機能する分子を探索する。さらには両親媒性ウレアの自己集合で形成する超分子ヒドロゲルを用い生体高分子の電気泳動を検討する。
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Research Products
(15 results)
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[Book] ゲル化・増粘剤2018
Author(s)
山中 正道 他
Total Pages
691
Publisher
㈱技術情報協会
ISBN
978-4-86104-691-9-3043