2015 Fiscal Year Annual Research Report
炭素質材料への金属のインターカレーション機構の解明と次世代二次電池負極材料の開発
Project/Area Number |
15H03852
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Research Institution | Osaka Electro-Communication University |
Principal Investigator |
川口 雅之 大阪電気通信大学, 工学部, 教授 (10268295)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
榎本 博行 大阪電気通信大学, 工学部, 教授 (10213563)
松尾 吉晃 兵庫県立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20275308)
村松 康司 兵庫県立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50343918)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 二次電池 / 炭素質材料 / インターカレーション / 機構解明 / 負極材料 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ホストである炭素質材料に対するゲスト金属の挿入反応(インターカレーション)の機構を解明し、次世代エネルギー貯蔵用二次電池の負極材料を開発することを目的としている。ここで炭素質材料とは、グラファイト類似の層状構造でホウ素/炭素/窒素から成るB/C/N材料、および低結晶性カーボンを示している。 平成27年度は、代表者の川口と大学院生が大阪電通大において既存の化学気相蒸着(CVD)装置を用いて、流量・温度を調整することにより、組成の異なるBCxNy材料(x=2.2~6.5, y=0.76~1.0)やBCx材料(x=6.9~9.6)の作製に成功した。当該研究費で購入した電気化学特性評価装置で評価したところ、これらの材料にはリチウム(Li)やナトリウム(Na)が電気化学的にインターカレートされ、層内に規則正しく入ったステージ構造を示すことが分かった。特にBCx材料にはLiが、BCxNy材料にはNaが多くインターカレートされ、それぞれLiおよびNaイオン二次電池の負極として390mAh/g、および190mAh/gの容量を示した。 上記BCxNy材料とBCx材料に対して、研究協力者のHeroldらはフランスNancyの研究所で、LiやNaの低融点金属とCaやMgのような高融点金属の合金を用いた液体合金法で金属のインターカレーションを試み、可能性を見出している。また、研究分担者の榎本と大学院生は、上記炭素質材料の室温電気伝導度、および電気伝導度の温度依存性を評価中である。研究分担者の村松はX線吸収分光法(XAS)を用いてこれらの材料の電子状態について測定している。これらの結果と金属のインターカレーションのしやすさについて今後考察したい。 一方、研究分担者の松尾はグラフェンライクグラファイトに対しNaが電気化学的にインターカレーションされることを見出している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的である炭素質材料に対するゲスト金属のインターカレーション反応の機構を解明と次世代エネルギー貯蔵用二次電池の負極材料を開発に対し、以下の3つの良好な結果を得ているためである: 1.流量・温度を調整することにより、組成の異なるBCxNy材料(x=2.2~6.5, y=0.76~1.0)やBCx材料(x=6.9~9.6)の作製に成功している。また、これらの材料に対しLiおよびNaが電気化学的にインターカレートされ、層内に規則正しく入ったステージ構造を示し、LiおよびNaイオン二次電池の負極として高い容量(それぞれ390mAh/g、および190mAh/g)を示したことは1年目としては良好な成果であった。 2.上記BCxNy材料とBCx材料に対して、液体合金法で金属のインターカレーションの可能性を見出したり、これらの材料の室温電気伝導度および電気伝導度の温度依存性を評価できていることも今後の成果につながる。また、XASを用いた材料の電子状態について測定できていることも、インターカレーション機構の解明に向かっていると言える。 3.BCxNy材料やBCx材料とは異なり、炭素だけから成るグラフェンライクグラファイトに対しNaが電気化学的にインターカレーションされていることも炭素質材料全体のインターカレーションのしやすさを考察する上で重要な成果である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は予定通り、当該研究は順調に推移したので、引き続き当初の予定通り進める予定である。平成28年度は具体的には以下のように進めたい: 1.炭素質材料の作製:研究代表者の川口と大学院生(博士後期課程在学中)の石川は、大阪電通大にて、引き続きCVD装置を用いてBCxNy材料やBCx材料を作製する。研究分担者の松尾は、兵庫県立大学にてグラフェンライクグラファイトの作製を行う。 2.層間化合物の作製:川口、石川、松尾はホスト材料である炭素質材料に対して、気相法および電気化学法でNa、Mg、Caなどの1族あるいは2族金属のインターカレーションを行い、層間化合物を作製する。また、川口と石川は研究協力者のHerold(仏、Nancy)を訪問し炭素質材料に対して液体合金法でMgやCaのインターカレーションを行う。 3.電気特性および電子状態の評価:川口、石川、および研究分担者の榎本は、炭素質材料および層間化合物の室温電気伝導度および電気伝導度の温度依存を調べ、両者の違いからホスト‐ゲスト間の相互作用について考察する。研究分担者の村松、川口と石川は兵庫県ニュースバル放射光施設およびカリフォルニアALSにてXAS測定を行い、層間化合物の電子構造を調べ、元のホスト材料と比較・考察する。 4.成果発表:炭素材料学会や日本化学会などの国内の学会、炭素に関する国際会議で発表し、議論を深める。また、国際学術雑誌に投稿・発表する。 5.研究のまとめ:川口が以上の成果について整理し、次年度の計画を立案する。
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Research Products
(10 results)