2016 Fiscal Year Annual Research Report
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15H03862
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
横山 英明 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 准教授 (80358316)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ポリマーブラシ / 界面 |
Outline of Annual Research Achievements |
生体内物質や生物の非吸着性(非着性)材料は多くの分野で求められている。その対策として、固体表面に親水性ポリマー鎖を結合したポリマーブラシが知られている。我々は、ブロックコポリマーの表面偏析を利用して、Grafting-from法に匹敵する極めて高いブラシ密度のポリマーブラシを容易に作製できる動的ポリマーブラシ法を開発した。動的ポリマーブラシ法では、両親倍性ブロックコポリマーを低Tgのエラストマー中に分散させ、水接触時に自発的な表面偏析を誘起し、ポリマーブラシを形成させる。動的ポリマーブラシは、平衡に向かっての自発的な過程であるため、自己修復性を有する。これまでに、高密度ブラシの創製は確認されているが、動的な過程を含めたメカニズムは十分に理解されていない。 様々な分子量・組成を持つPEG-PDMSあるいはPB-PEGブロックコポリマーの水界面への偏析によって生成する動的ポリマーブラシの形成ダイナミクスを水晶発振子の複素インピーダンス測定(QCR)により検証した。動的ポリマーブラシでは全質量は変化しないが、水界面で水と流体力学的に相互作用しながら振動するため、弾性波の反射条件が粘弾性的に変化し、界面のブラシ形成が確認された。水中での水晶発振の複素周波数変化は、動的ポリマーブラシの粘度に敏感であり、低濃度から急激に増加する性質を示すため、動的ポリマーブラシの生成をより高感度に測定できた。ポリマーブラシが水界面に形成している場合、ブラシ層のアコースティックインピーダンス、厚さを関数としたモデル解析することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度に検討した様々な分子量・組成を持つPEG-PDMSあるいはPB-PEGブロックコポリマーの水界面への偏析によって生成する動的ポリマーブラシの形成ダイナミクスを水晶発振子の複素インピーダンス測定(QCR)により検証した。動的ポリマーブラシは、NRでは追跡の困難な短い時間スケールで形成するため、時間分解能が高く、高感度の測定が可能なQCRにより、水/ポリマー界面での動的ポリマーブラシ形成を追跡する必要がある。水晶発振子の電極表面にPDMSとPEG-PDMSの混合物を薄膜化し、水との界面の構造解析を行った。動的ポリマーブラシでは全質量は変化しないが、水界面で水と流体力学的に相互作用しながら振動するため、弾性波の反射条件が粘弾性的に変化するため、界面の構造情報が得られた。水中での水晶発振の複素周波数変化は、動的ポリマーブラシの粘度に敏感であり、低濃度から急激に増加する性質を示すため、動的ポリマーブラシの生成をより高感度に測定できた。ポリマーブラシ/水界面を形成している場合、ブラシ層のアコースティックインピーダンス、厚さを関数としたモデル解析することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
分子構造と動的ブラシの構造の関係が導かれたが、それを包括的に理解するには、その現象の背後にある熱力学・動力学の理解が不可欠である。この現象の物理モデルを検討し、分子構造から動的ポリマーブラシの構造が予想可能となるモデルを構築する。モデルが構築できれば、最適な動的ポリマーブラシ構築のために必要な分子デザインの指針となる。 また、最適化した動的ポリマーブラシについて、QCRを用いて、タンパク溶液から動的ポリマーブラシへのタンパク吸着実験を行う。水晶発振子の電極上に動的ポリマーブラシを形成する薄膜を製膜し、水と接触させ、タンパク溶液に置換することで、タンパクの吸着をQCRの振動数変化として検出する。タンパクの吸着量は、動的ポリマーブラシの構造、すなはち、ブラシの密度やブラシの厚さのパラメータと比較され、タンパク非吸着性に必要なブラシ構造を明らかにする。 動的ポリマーブラシの可能性のある問題点としては、PEGが高分子量化すると、結晶化によりエラストマー内での運動性が著しく低下し表面偏析が阻害されることが考えられる。その場合には、両親媒性のブロックコポリマーの水溶性ブロックとして、水溶性のメタクリレートなどを合成し、同様の検討を行う。
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Research Products
(10 results)