2015 Fiscal Year Annual Research Report
トルキシリン酸を分子バネとして活用した透明かつ高強度高分子フィルムの作成
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15H03864
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Research Institution | Japan Advanced Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
金子 達雄 北陸先端科学技術大学院大学, マテリアルサイエンス研究科, 教授 (20292047)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
桶葭 興資 北陸先端科学技術大学院大学, マテリアルサイエンス研究科, 助教 (50557577)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 高分子合成 / 光二量化 / バイオプラスチック / 芳香族ポリマー |
Outline of Annual Research Achievements |
桂皮酸の付加にはH(頭部)一T(尾部)付加とH-H付加の2種類の方向がある。この反応により得られるトルキシル酸はα型とβ型の2種類があり、それぞれの型からジアミンとジカノレボン酸が得られ、合計4種のモノマーが得られる。この知見を基に以下の研究を進めた。 1 H-Tアンチ付加型トルキシル酸(α型)の合成条件の確立:4-アミノ桂皮酸のアミノ基を塩酸で修飾することで、H-T型の結晶を作成した。この粉末に直接高圧水銀灯による紫外線照射を行った所、α型トルキシル酸が合成できた。反応速度としては2グラムを合成するのに2日間程度要した。収率は98%であった。次に、得られたα型トルキシル酸のカルボン酸部位をメチル化することで芳香族ジアミンを得た(収率95%)。さらに、アミノ基のアセチル化を行った後紫外線照射を行い、4,4'-ジアセトアミドトルキシル酸であるジカルボン酸を得た(収率98%) 2 H-H付加型トルキシン酸(β型)の合成条件の確立:4-ニトロ桂皮酸に水銀灯照射することでβ型の4,4'-ジニトロトルキシン酸をヘキサン分散条件で合成した。この時はメチル化後に分散させることで4,4’-ジニトロ-β-トルキシン酸ジメチルを収率97%で得られた。次に、5 % Pd/C触媒を加え、メタノール溶媒中にて50℃で1.5時間水素還元反応を行い目的物である4,4’-ジアミノ-β-トルキシン酸ジメチルを得た。収率は93%であった。 3 α型とβ型の構造決定:α 型およびβ型の単結晶を作成し 4紬X線構造解析により立体構造を決定するに至った。続いて、NMRによりα型のおよびβ型のトルキシル酸誘導体のシクロブタンプロトンのNMRシグナル強度比の違いを明確に捉えた。これらのデータは構造決定における外部標準となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1 H-Tアンチ付加型:トルキシル酸(α型)の合成条件の確立:4-アミノ桂皮酸のアミノ基を塩酸で修飾する時、直接粉末に高圧水銀灯による紫外線照射を行った所、α型トルキシル酸が合成できたものの、1グラム以上の規模で照射を行うとムラなく水銀灯の照射を行うことが難しくなり、反応性に場所依存性が出た。そこで、様々な溶媒を用いて撹拌しながら、紫外線照射を行った。その結果、ヘキサンやベンゼンなどの非溶媒を用いて分散状態を作り紫外線照射したところ、極めて再現性良く光二量化が起こった。以上の検討により、目的のα型トルキシル酸をほぼ完ぺきな収率で得ることが出来た。同時に4,4'-ジアセトアミドトルキシル酸であるジカルボン酸もほとんどロスの無いレベルで合成でき、順調に進めることが出来た。 2 H-H付加型トルキシン酸(β型)の合成条件の確立:4-ニトロ桂皮酸に水銀灯照射する時、以下の最適条件を見出した。4-ニトロ桂皮酸メチルの結晶を用い、これをヘキサンに分散させ、高圧水銀灯で4時間紫外線照射し、ろ過により沈殿を回収し、減圧乾燥した。次に、4,4’-ジニトロ-β-トルキシン酸ジメチルに5 % Pd/C触媒を加え、メタノール溶媒中にて50℃で1.5時間水素還元反応を行った。その後、ろ過してPd/Cを除き、減圧下でメタノールを除去して目的物である4,4’-ジアミノ-β-トルキシン酸ジメチルを得た。全ての過程において収率は高く、この項目も順調に進めることができた。 3 α型とβ型の構造決定:α 型およびβ型の単結晶X線構造解析による立体構造を決定と、NMRによるシクロブタンプロトンのNMRシグナル強度比の違いを明確に捉えることができたため、順調であるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
1 トルキシリン酸モノマーからのアラミド型ポリマーの合成と物性評価:H27年度で得たトリキシリン酸モノマーの重縮合条件を明確にし、ポリマーを得る。これらポリマーの合成は、非プロトン性アミド系溶媒中でリン酸系縮合剤の存在下で直接重縮合法により行う。重合条件が見つからない場合には、酸クロリド法も検討する。 2 ポリマーの溶解性および軟化温度、分解温度、熱膨張などの熱的物性を評価:得られた各種構造のポリマーの溶解性と分子構造との相関を明確にする。また熱分析TG/DTA,DSC)によりガラス転移温度、熱分解温度に関して評価する。DSCカーブが不明瞭な際には、次項目で作成するフィルムを用いて、そのTMA測定を併用し軟化温度を明らかにする。同時にフィルムの厚み方向における線熱膨張係数も測定する。熱膨張係数は低いほど良く、ガラスなどとの有機無機複合材料として展開する際に有効である。 3 アラミド型ポリマーの成形および力学物性評価:ポリマー溶液からのキャストおよび溶融成形によるフィルムやファイバーの成形を行い、成型体の構造と光学的・熱力学物性との相関解明を行う。具体的には、透明度、屈折率、アッベ数、複屈折を調べ、分子構造との関係を調べる。特にレンズなどの精密な光学材料として応用するには複屈折が小さい方が良い。これらのアラミドは分子主鎖方向と側鎖方向の両方に芳香環が存在するため、小さい複屈折が期待される。これら一連の物性を得たうえで、構造と物性との関係を相互的に議論し、最も高性能かつバランスの良い物性を示すアラミドを見出し、高い力学性能と透明性を併せ持つ、革新的な透明フィルムを開発する。
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Research Products
(3 results)