2016 Fiscal Year Annual Research Report
低分子液晶ブルー相テンプレート法によるポリマーブラシ付与複合微粒子の結晶形成
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15H03866
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
大野 工司 京都大学, 化学研究所, 准教授 (00335217)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ポリマーブラシ / 液晶 / 微粒子 / コロイド / リビングラジカル重合 / コロイド結晶 |
Outline of Annual Research Achievements |
ポリマーブラシ(PB)を付与したガラス基板を用いた液晶セル中の液晶の配向挙動に関して研究されており、このセル中では、従来のポリイミド系の配向膜を用いた液晶セル中とは異なる液晶の配向挙動が示された。液晶中に微粒子を分散させた系についても研究がなされており、微粒子表面に対する液晶の配向に応じて、特徴的な形の配向欠陥構造が微粒子表面近傍に生じる。そのため、欠陥構造を観察することで微粒子表面に対する液晶の配向状態を評価できる。そこで、本研究ではポリマーブラシ付与複合微粒子近傍の液晶の欠陥構造を観察することで、種々のPB表面に対する液晶の配向挙動について比較検討した。実験では、粒径5ミクロンのシリカ微粒子表面に開始基を固定化し、表面開始ATRPによってpoly(methyl methacrylate) (PMMA)、poly(buthyl methacrylate) (PBMA)、poly(hexyl methacrylate) (PHMA)、poly(lauryl methacr-ylate) (PLMA)、poly(ethyleneglycol)methyl ether methacrylate (PEGMA)を重合したpoly-(PEGMA)、およびメソゲン基を有するモノマーを重合したpoly[6-[(4-cyano-4'-biphenyl)oxy]hexyl methacrylate] (PCBMA)を付与した微粒子を合成した。これら複合微粒子と4-cyano-4'-pentylbiphenyl(5CB)を混合し微粒子分散液を得た。ラビング処理済みのpoly(vinyl alcohol)膜の施されたガラス基板2枚に125ミクロンのスペーサーを挟むことで液晶セルを作製し、これに注入した混合液を偏光顕微鏡(POM)を用いて直交ニコル下室温で観察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ポリマーブラシ付与複合微粒子の合成に関して構造パラメータ(グラフトポリマーの種類)を変えた一連のサンプルを調製し、それら粒子表面に対するモデル液晶の相互作用を系統的に評価することができ、複合微粒子表面近傍における液晶の配向挙動に関して基本的な知見を得ることができたため。特に、PMMA、PBMA、PPEGMAを付与した微粒子近傍ではBoojum欠陥が見られ、液晶がPB表面に対し水平配向していることがわかった。PHMAを付与した微粒子近傍ではBoojum欠陥とSaturn ring欠陥が共に見られ、液晶がPB表面に対し斜めに配向していると考えられる。PLMAを付与した微粒子近傍ではSaturn ring欠陥が見られ、液晶がPB表面に対し垂直配向していることがわかった。したがって、PMMA、PBMA、PHMA、PLMAのPB表面に対しては、PB側鎖のアルキル基が長くなるにつれ液晶の配向が水平から垂直に移る傾向が見られた。これはPB側鎖のアルキル基と5CBのアルキル基との相互作用によるものと考えられる。一方、PPEGMAブラシ表面に対しては側鎖が長いものの、液晶は水平配向した。これはPEG鎖の親水性が関与していると考えられる。また、PCBMAを付与した微粒子近傍では液晶の配向がランダムに乱されていることを確認した。これはPCBMA側鎖のメソゲン基の液晶性が関与していると考えられる。これにより、昨年度に得られた、複合微粒子と液晶の親和性に関する知見とを併せ、複合微粒子と液晶、ポリマーブラシと液晶の相互作用をより深く理解できることに繋がると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
おおむね順調に展開しており研究計画の変更は必要ない。これまでに得られた、ポリマーブラシ付与複合微粒子の液晶中における分散特性、および、それら表面近傍での液晶分子の配向挙動を十分に理解し、体系化することで、液晶内における微粒子の秩序構造形成を達成できると期待できる。また、外場(電場および磁場)を使い、液晶分子の配向挙動を制御することで微粒子の新規高次構造形成にも取り組んでいく。
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Research Products
(2 results)