2016 Fiscal Year Annual Research Report
Development of methods for lithium self-diffusion coefficient measurements in mixed conductors using isotope exchange
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15H03872
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
桑田 直明 東北大学, 多元物質科学研究所, 准教授 (00396459)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 混合伝導体 / 拡散係数 / リチウムイオン電池 / 二次イオン質量分析 / 全固体電池 / 同位体 / トレーサー拡散係数 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、イオンと電子の両方が動く混合導電体のリチウム拡散係数を計測する手法を開発することである。本年度は、同位体置換と二次イオン質量分析法(SIMS)を用いた新しい手法を固体中でリチウムイオンが動く固体電解質(アモルファスリン酸リチウム)に適用して、拡散係数の解析方法を確立した。 具体的には、6Li同位体を含むアモルファスリン酸リチウム薄膜を、パルスレーザー堆積法により作製した。その後、7Li同位体を含む電解液に浸漬させることにより、同位体のイオン置換を行い、6Liと7Liの部分を持つ拡散対を作製した。また、電解液を用いなくても6Li薄膜の一部分に7Li薄膜を堆積することでも拡散対を作ることができた。このようにして作った拡散対に対してSIMS測定で同位体分布を調べ、拡散方程式を用いてフィッティングすることにより、拡散係数を決定した。 リチウムイオンの拡散係数は25℃から160℃の範囲で測定した。室温での拡散係数は7×10-13 cm2/sであり、活性化エネルギーは0.57 eVであった。また、コンピュータを用いた数値計算を行うことでも、拡散係数を計算した。交流電気伝導度測定から、イオン伝導度を求め、そこから伝導度拡散係数を決定した。伝導度拡散係数は全温度範囲でSIMSの拡散係数よりも大きいことが分かった。これはリチウムイオン同士の多体効果を反映したものである。 以上の研究により、リチウムイオン伝導を示す固体電解質のリチウムの拡散係数を決定する事に成功した。これらの成果は固体イオニクス討論会や物理学会で発表され、国際誌のSolid State Ionics誌に掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は拡散係数測定の信頼性と再現性を確立するために、固体電解質であるリン酸リチウム薄膜を用いた実験を行った。電解液を用いるイオン交換法、固体内拡散のみを利用したマスク法により拡散対を形成し、それぞれ拡散係数を求めたところ、室温から160℃の範囲でトレーサー拡散係数は非常に良く一致し、手法の妥当性が実証できた。昨年度までに行ったLiCoO2に加えて、本年度はa-Li3PO4の拡散係数を明らかにすることができ、また、研究成果を論文誌に掲載して広く公表した。従って、おおむね順調に研究が進行していると言える。 来年度の研究では、LiCoO2のリチウム組成を変化させて拡散係数を明らかにする計画である。そのために、段階的に薄膜をイオン交換していくことで同位体濃度の時間変化を測定する方法(ステップイオン交換法)を開発した。この手法では、バルクの拡散係数と表面交換速度の遅い方が解析できる。作製直後のa-6Li3PO4薄膜ではバルク拡散が支配的だが、薄膜を空気中にさらすと、界面交換速度が遅くなり支配的になることが確認された。この手法を適用することで、来年度はLixCoO2の拡散係数を明らかにする計画である。また、スピネル構造のLiMn2O4に対しても拡散係数測定を行い、結晶構造の違いによる拡散係数の変化を明らかにする。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は、電気化学的にLiを脱離したLixCoO2薄膜を作製し、イオン交換法を利用して拡散係数の組成依存性の解明に取り組む。Li量に依存した拡散係数の変化から、拡散機構を明らかにする。空孔拡散を仮定すると、定比組成(x = 1)の近傍では拡散係数が急激に変化すると予想される。そこで、実験結果とモデル計算を比較して、リチウム空孔量と移動度の検討を行う。 また、電気化学的な化学拡散測定では、組成変化に対して相は一定であること等の様々な仮定が前提として含まれている。従って、電気化学的に得られた化学拡散係数がどれだけ真実の値に近いのか、直接法により求めた拡散係数により検証することが求められている。そこで、同じ薄膜試料を用いて電気化学的手法とSIMS法でそれぞれ化学拡散係数とトレーサー拡散係数を求め、理論との比較を行う。非平衡熱力学の関係から、化学拡散係数はトレーサー拡散係数に化学ポテンシャルの組成微分の補正因子を掛けただけ増幅されると予想される。そこで、LiCoO2薄膜を用いた全固体(または液体)リチウム電池を組み、化学ポテンシャルと化学拡散係数を電気化学的手法で求め、理論との比較を行う計画である。 さらに、当初の計画通り、本手法を別の材料に適用する。具体的には、スピネル構造のLiMn2O4、およびLixMn2O4薄膜の拡散係数を明らかにする。スピネル構造では、3次元的な拡散パスが予想されるため、拡散係数の組成依存性はLiCoO2とは異なり、定比組成でも拡散が可能と予想される。また、拡散の異方性が無いことも異なる点である。それぞれの正極の拡散機構を明らかにした結果をまとめて論文として発表する。
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Research Products
(14 results)
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[Journal Article] Direct measurement of nanoscale lithium diffusion in solid battery materials using radioactive tracer of 8 Li2016
Author(s)
H Ishiyama, SC Jeong, YX Watanabe, Y Hirayama, N Imai, HS Jung, H Miyatake, M Oyaizu, A Osa, Y Otokawa, M Matsuda, K Nishio, H Makii, TK Sato, N Kuwata, J Kawamura, H Ueno, YH Kim, S Kimura, M Mukai
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Journal Title
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research Section B: Beam Interactions with Materials and Atoms
Volume: 376
Pages: 379-381
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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