2015 Fiscal Year Annual Research Report
ナノ構造体の座屈変形を積極利用した革新的ナノデバイスの最適設計
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15H03888
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
梅野 宜崇 東京大学, 生産技術研究所, 准教授 (40314231)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
島 弘幸 山梨大学, 総合研究部, 准教授 (40312392)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ナノ材料 / 座屈 / 原子シミュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、中空円筒ナノ構造の代表格である炭素ナノチューブ(CNT)と窒化ホウ素ナノチューブ(BNNT)について、外圧下における構造不安定性を解析し、断面圧縮座屈および軸圧縮座屈のモード分岐過程を追跡した。カーボン系に対して従来適用されるAIREBO(Adaptive Intermolecular Reactive Bond Order)ポテンシャルを元に、多層ナノチューブの層間相互作用を支配するファンデルワールス項の最適化を行った。さらに、BNNTについては層間のクーロン相互作用が働くため、窒素原子およびホウ素原子に電荷を与えることでこれを模擬するモデルを構築した。 径方向・軸方向それぞれの圧縮荷重に対して、荷重増加に伴う構造最適化および変形追跡を分子動力学計算によって行い、座屈モードの分類と座屈荷重条件同定を行った。さらに、準静的荷重条件では顕在化しない隠れたモード(潜在的不安定変形モード)を、原子構造不安定モード解析法により求め、荷重や構造パラメータとの相関性を明らかにした。 これらの解析により、軸方向圧縮では構造パラメータ(半径・全長)の変化に伴って生じる座屈モードの遷移が、潜在的不安定モードのシフトによって生じるメカニズムが明確に示された。欠陥の影響により小径のナノチューブでは座屈モードが消失すること、大径のナノチューブでは座屈直前に欠陥周りに不安定モードベクトルの局在化が起こることなど、ナノチューブに特徴的な座屈メカニズムが明らかとなった。径方向圧縮座屈においては、ナノチューブのカイラリティによっては特異な皺状変形が生じうることが示され、そのための臨界内径・層数を潜在的不安定変形モード評価から予測することができた。変形に伴う物性変化予測については、強結合近似モデルを用いたシミュレーションに着手した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、我々が提唱する原子構造不安定モード解析法を活用することによりナノチューブの座屈メカニズムの解明を進めることができた。軸方向圧縮においてはチューブのサイズ・アスペクト比により多様な座屈モードが現れるが、潜在的不安定モードの観点からこの現象を明確に説明することに成功している。点欠陥が不安定変形モードに及ぼす影響についても、欠陥の種類によっては座屈直前に欠陥近傍へのモード局在化が起こるなど、ナノ材料に特有な興味深い特性を明らかにすることができた。径方向座屈による皺状変形(radial corrugation)はこれまで連続体モデルによって予測されており原子論的アプローチが不足していたが、これについても原子構造不安定変形モード解析により高波数の皺状変形が起こる条件を予測することができた。このようにナノチューブの多様かつ特有な座屈メカニズムを明らかにすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続き、中空円筒ナノ構造の代表格である炭素系や窒化ホウ素系のナノチューブ材料の座屈変形解析およびそれに伴う物性の解析を行い、座屈変形を利用したデバイス設計の指針を得る。より現実的なデバイス設計に寄与するため、様々な欠陥構造が座屈挙動に及ぼす影響についても検討し、座屈変形を生じるための臨界欠陥密度と構造パラメータの関係などを求める。強結合近似法(Tight-Binding法)によるバンド構造解析を実施し、座屈前および座屈後の構造において電子状態がどのように変化するかを明らかにすることで、座屈によってもたらされる機能性変化の予測およびそのメカニズムの解明を目指す。これに平行して、多元系ナノ構造体の原子モデリング解析に取り組む。強誘電体材料のナノワイヤやナノチューブ構造から着手する。構造内部における電荷移動や多極氏相互作用を考慮する必要があるため、それらを適切に表現するポテンシャル関数を用いた原子モデリング手法を確立する。分子動力学解析および原子構造不安定モード解析を実施し、強誘電体ナノ構造体に特有な座屈ならびに物性変化のメカニズムを解明する。
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Research Products
(3 results)