2016 Fiscal Year Annual Research Report
高温微粒子ピーニングによる構造用鋼の多機能化と効果発現メカニズム
Project/Area Number |
15H03894
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
小茂鳥 潤 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (30225586)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
亀山 雄高 東京都市大学, 工学部, 准教授 (20398639)
大宮 正毅 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 准教授 (30302938)
曙 紘之 広島大学, 工学研究院, 助教 (50447215)
清水 一道 室蘭工業大学, 工学研究科, 教授 (60206191)
菊池 将一 神戸大学, 工学研究科, 助教 (80581579)
森田 辰郎 京都工芸繊維大学, 機械工学系, 教授 (90239658)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 表面改質 / 微粒子ピーニング / 耐食性 / 疲労特性 |
Outline of Annual Research Achievements |
金属間化合物が種々の優れた性質を有することは周知の事実である.しかし加工性に劣るという最大の欠点があり,これが幅広い実用化への妨げとなっている.本申請では,溶射やコールドスプレーなどに変わる新たな手法を提案し,それにより,構造用鋼の表面のみを短時間に金属間化合物化することを目的としている.具体的には,高周波誘導により加熱した金属に,高速(100~150m/s)で微粒子を投射することにより,被処理面を投射粒子成分と基材成分で構成される金属間化合物に改質するプロセスを提案た.単に提案するのみならず,金属間化合物化した表面の耐食性,高温酸化性,耐摩耗性,摺動特性さらには疲労特性を調べ,その効果の検証を行っている. 詳細は割愛するが,これまでに,基材はチタンおよびチタン合金(Ti-6Al-4V合金)を基材として,その表面に対して種々の粒子(Ti + Al,Ti + Al + Fe,Ti + Al + Ni)を投射して,金属間化合物を創成することを試みてきた.結果の詳細は後述するが,耐摩耗性や耐高温酸化性なの優れた特性を輸する表面の作成が可能なことを実証した.また,表面近傍に界面が発生することが,強度的観点から弱点として作用するため大きな問題となっているが,こ表面処理時の熱履歴を工夫することでこの解消ができる可能性を示した. 被膜創成メカニズムに関しても学術的観点から仮説検証型の実験を実施してきた.その結果,空孔の無い緻密な金属間化合物を創成するためには,局所的に溶融することが必須であり,そのためには,粒子成分と基材成分間の燃焼合成反応が重要であることが明らかとなっている. これらの成果は,後述する通り,7件の雑誌論文(原著,査読付き)および9件の学会発表として公開されている.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度はまず,過年度までに作製した, Ni-Al金属間化合物層に対して高温連続酸化試験を行い,被処理面の耐酸化性を評価した.その結果,AIH-FPP処理を施した部位は優れた耐酸化性を持つことが明らかとなった.これは,Ni-Al金属間化合物層が高温酸化雰囲気の下でAl2O3を連続的に生成し,それが保護被膜となるためである. つぎに,純チタン表面にAl元素を拡散させることによって基材表面をTi-Al金属間化合物化させることを試みた.まず,純チタンに対してFe/Al MM粒子を用いた雰囲気制御高周波誘導加熱微粒子ピーニング(AIH-FPP)処理を行った.具体的には,粒子投射条件,および加熱保持条件を種々に変更し,AIH-FPP処理による表面改質効果を調べた.その結果に基づき,Al元素の拡散とそれによる金属間化合物創成メカニズムについて検討・考察を加えた.さらに,摩擦摩耗試験を行い,被処理面の耐摩耗性を評価した. その結果,Fe/Al MM粒子を用いたAIH-FPP処理では,粒子混合比および粒子投射温度によって粒子の移着は抑制可能であり,基材表面に厚さ数ミクロンの移着層が形成されることが明らかとなった.さらに750℃で粒子投射後,900℃に昇温し加熱保持を行うことで,投射粒子成分のAlが基材へ,基材のTiが移着層へ拡散し,基材表面にTi-Al金属間化合物を含む厚さ10ミクロン程度の厚さのAl成分の拡散層が形成される可能性が示された.最後に,この表面対して,往復摺動型の摩擦摩耗試験を行い,未処理材の試験片に実施したところ,AIH-FPP処理を施した試験片の耐摩耗性が向上していることが明らかとなった.これは,試験片表面がTi-Al金属間化合物化し,硬さが上昇したためと考えている.
|
Strategy for Future Research Activity |
Ti-Al金属間化合物は,軽量で耐食性や耐摩耗性に加えて耐熱性にも優れるため,高温構造材料としての利用が期待されている.実際,自動車のターボチャージャーなどの素材として最近利用され始めている.しかし,靱性や延性に乏しく脆いという欠点を有しているため,バルク材を部品形状に機械加工して利用することは困難である.過年度に引き続き最終年度も,この金属間化合物を鋼の表面に被覆する手法として,申請者らが開発したAIH-FPP 処理に着目して研究を行う.とくに最終年度は,創成する金属間化合物種の拡充とその評価に重点を置きながら研究を推進する. その第一段階として,Ni-Al金属間化合物と同様に耐酸化性,耐摩耗性など優れた特性を持ち,比較的共晶点の高いTi-Al金属間化合物に着目し,AIH-FPP処理を用いて炭素鋼表面に均質な化合物被膜を創成することを試みる.さらに創成された被膜に対して,往復摺動摩擦摩耗試験を行うことで,被膜の耐摩耗性について検討・考察を加える. 創成する金属間化合物の組成を制御するためには,メカニカルミリングにより投射する粒子の作製を行う.具体的には,チタン粒子とアルミ粒子を混合した粒子を作製する.被処理面の化合物同定はX線回折装置を用いて行う.被処理面近傍の断面組織の観察および分析は,樹脂に埋込んだ試験片を被処理面と垂直に切断し,耐水研磨紙およびコロイダルシリカ懸濁液を用いて鏡面状に仕上げた面に対して行う.分析には,走査型電子顕微鏡およびエネルギー分散型X線分光装置を用いる.被膜の耐摩耗性の評価は,室温・大気環境下で往復摺動摩擦摩耗試験機を用いて行った.相手材にはアルミナボールを使用し,試験条件は,試験荷重を2.0 N,摺動速度を600 mm/min,摺動間隔8 mm,摺動回数は14000回で行う.摩擦摩耗試験後は摩耗痕をSEMにより観察し,摩耗の状況について詳細に調べる.
|
Research Products
(17 results)