2016 Fiscal Year Annual Research Report
Improvement of Machining Characteristics of EDM by Direct Observation of Gap Phenomena using Transparent SiC Electrode
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15H03899
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
國枝 正典 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (90178012)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
趙 永華 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (90759052)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 放電加工 / ワイヤ放電加工 / 加工現象 / 透明体電極 / 高速度ビデオ / シミュレーション / 熱流体解析 / ワイヤ振動 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度に確立した観察手法を用いて、棒状の工具電極と平板状の工作物電極間の単発放電における、工作物上の放電痕形成と加工屑生成メカニズムの解明を試みた。その結果、①表面に向かって負の勾配を持つ圧力分布による突沸、②工具電極と工作物からの金属蒸気のジェット噴流が衝突することによる放射状の流れ場が作るせん断力、が主な除去メカニズムとして観察できた。 そこで、①のメカニズムを考慮して、放電電流波形に高周波成分を重畳し、溶融金属の液面の振動を促し、共振によって除去効率を上げる実験を試みた。その結果、単発放電の除去量が周波数に依存することがわかった。 また、②のメカニズムをふまえて、工具電極材料として沸点と熱伝導率の異なる銅、黄銅、亜鉛を用いて、単発放電での工作物の除去量を比較した。その結果、熱伝導率が低く、沸点の低い材料を工具電極に用いた場合、工作物の除去量が大きいことが、放電痕の形状測定から明らかになった。これは、高速度ビデオを用いた加工屑生成の観察からも実証された。そこで、工具電極材料の違いが放電痕の形成過程に及ぼす影響を分子動力学計算し、工具電極に亜鉛を用いた方が放電痕が大きくなる計算結果が得られた。 以上より、ワイヤ放電加工において黄銅ワイヤよりも亜鉛被覆ワイヤを用いた方が加工速度が大きい原因として、放電ごとの工作物除去量が大きいことが考えられる。そこで、黄銅ワイヤと亜鉛被覆ワイヤとで、単発放電時のワイヤ振動を27年度に開発した光学式変位センサを用いて比較測定した。その結果、亜鉛被覆ワイヤの方が放電時にワイヤに作用する力積が大きく、亜鉛のジェットが除去量を増加する効果が裏付けられた。 さらに、連続放電でのワイヤ変位を光学式センサを用いて測定し、放電が生じる前に静電力によってワイヤが工作物に引き付けられ、放電が始まると放電反力によって振動が励起される現象が観察できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
加工間隙の直接観察により、従来未解明であった除去メカニズムが、主に①突沸現象と、②金属蒸気の衝突による放射状流れ場が作るせん断力に基づくことが明らかになった。これによって、溶融域のうち加工屑として除去される体積の割合(除去効率)が、現状では数%に過ぎない問題を解決する糸口が見えてきた。平成28年度は、その手段として放電電流波形に高周波成分を重畳する試みと、金属蒸気の強いジェット噴流が得られる黄銅や亜鉛を工具電極に使用する試みを行い、いずれの方法によっても除去量が増加する効果が得られた。除去効率を数十%に増加できれば、加工速度が現状の数十倍に向上できるので、放電加工技術の大きな発展を促すと考えられる。 特に、ワイヤ放電加工において、黄銅ワイヤよりも亜鉛被覆黄銅ワイヤの方が加工速度が大きいことは実用的に知られていたが、その理論的な説明は十分になされていなかった。平成27年度に、ワイヤ断線を生じさせずに放電頻度を上げられる限界が、亜鉛被覆ワイヤの方が大きいことを証明したが、本年度の研究成果により同じ放電頻度でも亜鉛被覆ワイヤの方が加工速度が大きいことが明らかとなった。 また、上記のメカニズムによる放電痕の形成と加工屑の生成を分子動力学と数値流体解析によってシミュレーションする試みも本年度に開始した。分子動力学で扱えるモデルの空間的なサイズと時間のオーダは現実に比べて3桁以上小さいので、定性的なシミュレーションに限られる。よって、連続体の熱流体解析を行う必要性があり、すでに着手している。 さらに平成27年度に、ワイヤ放電加工においてワイヤに垂直な方向のワイヤ電極の変位を2次元的に測定可能な光学式センサを製作したが、これを用いて黄銅ワイヤと亜鉛被覆ワイヤの放電反力の違いを測定することができた。また、連続放電中のワイヤ挙動の測定も可能になったので、当初の目標が順調に達成されている。
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Strategy for Future Research Activity |
放電電流波形、工具電極材料、加工液成分、加工液の供給方法などの加工条件を変化させ、除去効率を数十%に増加させることを目標とする。そのとき、理論的に指針を得るために、分子動力学計算と熱流体解析を行う。分子動力学計算でも定性的な指針が得られる場合が多いが、定量的なシミュレーションが困難であるため、より正確な指針を得るためには熱流体解析を行う必要がある。 一方、ワイヤ放電加工のワイヤ電極の挙動、放電点位置などは、透明体電極を用いてさらに詳しく観察する予定である。ワイヤが工作物に深く切り込んで行くときの放電現象、直線ではなく角の切断時の放電現象などを直接観察した例はない。また、光学式センサを用いて、より正確にワイヤの変位を測定し、直接観察の結果と合わせて加工現象の理解を進める。そして、ワイヤ放電加工の加工精度に影響を及ぼす因子を明確にする。 また、ワイヤ振動と、それに伴う放電点の分布、工作物の切断面の形状などが計算できるようなシミュレーションを開発する必要がある。直接観察の結果や、光学式センサの測定結果と照合することにより、シミュレーション精度を向上することができる。例えば、放電点において気泡の膨張による放電反力を受けるが、その力積は実験的に求める他に方法は無い。力積を仮定したワイヤ振動のシミュレーション結果と、実測のワイヤ振動を照合する逆問題解法により、放電反力が求められると考えられる。これによって、シミュレーション精度を向上させ、将来的には加工機に実装したい。
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Research Products
(10 results)