2015 Fiscal Year Annual Research Report
フラーレン複合型スマート研磨微粒子を用いた難加工材研磨メカニズムに関する研究
Project/Area Number |
15H03903
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
鈴木 恵友 九州工業大学, 大学院情報工学研究院, 教授 (50585156)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 高廣 九州工業大学, 大学院情報工学研究院, 教授 (10367401)
安永 卓生 九州工業大学, 大学院情報工学研究院, 教授 (60251394)
カチョーンルンルアン パナート 九州工業大学, 大学院情報工学研究院, 助教 (60404092)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | サファイアCMP / 水酸化フラーレン / 研磨微粒子 / 表面改質 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,ダイヤモンド微粒子やシリカ微粒子にフラーレンの水酸化物を吸着させ,光誘起反応により吸着層を改質させることで研磨微粒子の硬度や反応性などを独立に制御可能なフラーレン複合型スマート研磨微粒子を新規に開発し,難加工材料の高効率研磨技術へ展開することである.ここでは磨微粒子のサイズや反応性,そして硬度を研磨微粒子のパラメータに着目し,これらのパラメータと研磨性能との関係性を考察することで,加工対象物に対する最適な研磨微粒子の生成手法の確立を目指している.本年度は, 最初に水酸化フラーレンの吸着挙動に関する評価やコロイダルシリカ微粒子としたコア微粒子のサイズ変化に対する材料除去レートの影響,そしてポリシング時における研磨微粒子挙動観察を行なった.水酸化フラーレンの吸着挙動に関する評価としては動的光散乱法による微粒子径変化やpH変化による水酸化フラーレンの析出に関する評価を行なった.その結果,コア微粒子の粒子径に関わらず水酸化フラーレンの混合により2nm~4nm程度微粒子の増加が確認された.ここでは濃硫酸によりpH3に調整しても水酸化フラーレンの析出が見られず,コア微粒子に吸着した状態が維持された.次に水酸化フラーレン混合スラリーに対して紫外線レーザ光を3時間照射した場合,サファイアCMPの材料除去レートは全ての微粒子径で向上した.そのため,サファイアCMPの材料除去レートは,研磨微粒子表面の高度および反応性が影響しているものと考えられる.またコア微粒子における水酸化フラーレンの改質法に関してはこれまで紫外線レーザ光を用いてきたが,企業と共同で新規に他の手法について検討を開始した.その結果,1分程度で材料除去レートの向上が確認されており,現在特許出願を進めている.研磨微粒子挙動観察に関してはエバネッセント光を用いた観察システムを導入しポリシング時の動的観察を実施した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は当初の計画どおり炭素結合型スマート研磨微粒子の作製法の確立と研磨微粒子の粒子径の影響について評価した.ここでは紫外光を用いた微粒子作製装置の開発を行うとともに,微粒子径評価を動的光散乱法やラマン分光による評価を実施した.その結果,水酸化フラーレンの混合により研磨微粒子の粒子径が2nm~4nm程度増加する様子が確認された.水酸化フラーレン混合スラリーの研磨微粒子の特徴として,pH3の酸性溶媒でも水酸化フラーレンが析出しないことである.通常,水酸化フラーレン(水酸基数12)では,アルカリ溶液で可溶であるが酸性溶媒では析出する.しかしながら,水酸化フラーレン混合スラリーにおいては水酸化フラーレンの析出が見られないことから,比較的強い力で吸着しているものと推測される.表面改質についても,紫外線レーザ光に紫外線レーザ光を3時間照射した場合,サファイアCMPの材料除去レートは全ての微粒子径で向上した.そのため,サファイアCMPの材料除去レートは,研磨微粒子表面の高度および反応性が影響しているものと考えられる.そのため,炭素複合型スマート研磨微粒子製法においては,当初,複数の水酸化フラーレンなどのナノ炭素微粒子を微粒子表面に担持させることで反応性など変化させることを,溶媒や照射雰囲気など表面改質条件を制御することで,微粒子表面の硬度や反応性を制御する手法を導入する.具体的にはレーザ照射時に雰囲気制御が可能な 専用チャンバーの製作や外場による改質手法の導入などを実施する.ここでは企業と共同で新規手法について検討を開始している.一方,研磨微粒子の評価としては,エバネッセント光を用いた観察システムを導入しポリシング時の動的観察を実施した.ここでは,パッド材質の屈折率を調整した観察用の専用MEMSパッドによりパッドによる影響を除外した状態で観察が可能となる.
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究推進方策としては炭素結合型スマート研磨微粒子を作製するうえでの表面改質手法や条件の最適化や,反応性や研磨微粒子の硬度に関する評価手法の確立を行なう.特に表面改質過程で生成された研磨微粒子と評価パラメータの関係性,さらには研磨性能に対する影響を考察することで,難加工材料研磨に最適な研磨微粒子に関する指針を示す. 炭素結合型スマート研磨微粒子の表面改質に関しては,大きく分けてレーザ光照射による方法と企業と共同で外場を用いる方法で検証する.レーザ照射に関しては専用チャンバーでサンプル温度や,真空度そしてヘリウムの分圧制御しながらレーザ光照射を行なうことで研磨微粒子上に複数の炭素膜を生成させる.一方,外場による方法についても照射セルを改造することにより,サンプルの作成量の増加を図る. 研磨微粒子の評価法に関しては,電子顕微鏡やラマン分光などによる微粒子表面に生成された炭素同素体の同定を行なうともに,研磨微粒子の硬度や反応性に関する評価指標を確立する.電子顕微鏡では研究分担者である安永教授のもと研磨微粒子の構造や表面状態を観察する.一方,ラマン分光においては,十分な感度が得られない場合,ラマン増感を試みる. 微粒子の局所的な硬度に関する評価としては原子間力顕微鏡(AFM)のフォースカーブを用いて実施する.具体的には,ダイヤモンドアンビルを用いて炭素結合型スマート研磨微粒子をペレット成形し,ダイヤモンド針などを用いてサンプル表面に針を押し込む時の力を測定する.さらにダイヤモンド針圧着後,走査型電子顕微鏡により圧痕の観察を行なうことにより,微粒子の硬度の指標とする. また研磨微粒子の評価パラメータと研磨性能の関係のほかに研磨中における研磨微粒子の挙動観察をするため,評価用MEMSパッドや光による微粒子挙動観察を行なうことにより,研磨メカニズムを考察する.
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Research Products
(4 results)