2016 Fiscal Year Annual Research Report
高分子形燃料電池内水輸送現象の階層型連成シミュレーションモデルの構築と検証
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15H03912
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
大島 伸行 北海道大学, 工学研究院, 教授 (10217135)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
矢口 久雄 群馬工業高等専門学校, 機械工学科, 講師 (20568521)
栗原 央流 大分大学, 工学部, 准教授 (90344481)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 数値流体力学 / 固体高分子形燃料電池 / 多孔質 / 気液界面 / 連成シミュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
高分子形燃料電池(PEFC)の物質輸送現象の階層型連星シミュレーションモデルの構築として,3つの階層の数理モデルの開発検証について以下の課題研究を行った. 課題1:PEFCの耐久性にかかわる重要な課題として触媒層担持体であるカーボン溶出による触媒劣化について,初年度研究においてアノード側の局所的水素欠乏による起電力不均一が要因であることが示され,その抑制にはセパレータおよび多孔質内の非定常・不均一な流動拡散の予測制御が不可欠であると指摘された.今年度は引き続き,これをマクロスケール(連続体近似モデル)連成シミュレーションの代表的対象として取り上げてセルレベルおよびスタックレベルでの電池性能予測の実用化を図った.特に,非定常・非均一な流動条件における3次元的なセル特性予測を対象としてプログラム構築と検証研究を進めた. 課題2:気液流動界面および流動場の数値解析に関して,格子ボルツマン法(LBM)における数値安定性についての数学的基盤を確立した.また,新たに熱力学的局所平衡(連続体近似)に基づく界面数理モデルとして従来研究での2つのアプローチ(レベルセット法,フェーズフィールド法)を融合した統一的モデルを提案して,その基礎的検証を行った.これによって,気液界面現象において分子動力学と連続体近似を接続する階層的シミュレーションモデルの基盤を確立した. 課題3:分子動力学解析に関して,昨年度開発された熱力学的圧力の近似計算方法を水分子の分子動力学計算モデルに適用し,定量的検証を行った.これによって,PEFCの触媒性能において重要なナノスケールでの液水/蒸気界面の熱力学的物性予測の手段を確立した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実施計画課題の概ね90%を達成し,特に階層的連成シミュレーションのための数理モデルの研究に進捗を得て,最終目標を達成するする基礎を確立した.
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Strategy for Future Research Activity |
当初目標に沿って,以下の進展を図る 展開Ⅰ: 車載燃料電池ではエネルギー密度に対しての出力低下・触媒劣化を防ぐための作動温度・燃料濃度の均一性に厳しい制約がある.特に,起動・停止の過渡応答時の物質輸送・熱設計とそれらが電池性能に及ぼす影響の予測は,燃料電池の普及実用化に際して益々重要性を増している.そこで,電池セルへの非定常な燃料ガス供給に対する時間応答性を考慮した検証数値シミュレーションによって,それらの数値予測技術の確立を目指す. 展開Ⅱ:実機設計への適用を視野に,複雑な3次元形状の再現や非線形物理モデルの導入解析には大規模計算が不可欠となる.そこで,「京」級HPCIの新たな技術成果を導入して各要素シミュレーションの並列高速化を図る. 展開Ⅲ:本研究の最終目標である階層型連成シミュレーションの基本設計に従って,1,2年目成果を応用して要素モデル間相互の定量的関係性を明らかにする.各要素のナノ・マイクロ構造の電池性能への寄与メカニズムを定式化することで燃料電池の合理的設計への寄与を目指す.
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Research Products
(11 results)