2015 Fiscal Year Annual Research Report
高レイノルズ数円管流れにおける摩擦損失係数の定式化と普遍速度分布に関する研究
Project/Area Number |
15H03923
|
Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
古市 紀之 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 工学計測標準研究部門, 主任研究員 (10334921)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
辻 義之 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00252255)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 高レイノルズ数 / 壁乱流 / 流速分布 / 乱流強度分布 / 管摩擦係数 |
Outline of Annual Research Achievements |
H27年度においては、口径100mmの配管において、最大1,000,000の管レイノルズ数における流速分布計測を実施し、その速度分布と管摩擦係数との整合性および平均流速分布型、さらに空間情報に対する補正方法について検討を行った。主要な結果は以下の通り。 流速分布計測にはLDVを用いた。産業技術総合研究所における高精度流量校正設備を用い、安定した流量及び水温条件のもと、流速分布および乱流強度計測を粘性低層から後流にかけて精密に実施した。流速分布計測部の上流において、管摩擦係数の計測を同時に行い、ここから得られる壁面せん断応力から摩擦速度を算出した。平均流速分布において、対数則による整理を行うと、レイノルズ数が300,000以上において、カルマン定数や切片定数Bが一定となることが分かった。本研究においてカルマン定数は、0.382~0.383の値を取る。この平均流速分布から得られたカルマン定数は、300,000より大きいレイノルズ数に対する管摩擦係数の実験結果から得られる値と良く整合し、Superpipeにおける結果と大きな差があることが明らかになった。本研究で求められたカルマン定数は、平板境界層やチャネル流ときわめて近い値となっており、壁乱流における相似性を明確に示す結果を得ることができた。 乱流強度分布においては、PDFの不変性を用いた空間分解能に対する補正方法を検討したうえで、特にAttached Eddy モデルに対する検証を行った。このモデルの-1乗スペクトルについて検証したところ、低レイノルズ数において確認されるものの、高レイノルズ数領域では確認できないことが分かった。このモデルが乱流強度における対数直線性に関連性がないことを明らかにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
H27年度においては1,000,000までのレイノルズ数における流速分布の計測を行うことができ、この結果から数多くの知見を得ることができている。特に、Superpipeとは異なる管摩擦係数の結果に対して、流速分布との整合性を非常に高い精度にて確認することができたこと、カルマン定数が他の壁乱流との相似的な値を得ることができたことは非常に重要な情報である。この他、PDFの不変性を用いた空間分解能の補正方法について提案し、壁乱流におけるLDV計測の乱流強度の精度良い計測方法を確立することができた。管摩擦係数に関する再試験に関しては、その粗さの影響について検討するとともに、Colebrook-Whiteの式を適用し、その影響を明確にすることができた。低レイノルズ数と高レイノルズ数領域における特性変化については、平均流速分布からも一致した傾向が得られることも明らかにできた。さらに、H28年度以降の大口径配管における10,000,000オーダーの高レイノルズ数試験のためのウィンドーチャンバーの準備を終え、予備試験を実施した。 以上がH27年度に計画されていた研究計画に対する結果であり、当初予定されていた内容については、十分に実施された。さらに、乱流強度解析を行いAttached Eddy モデルの非成立を明らかにしたこと等については、当初H28年度計画に盛り込まれていたものであり、当初の計画以上に研究は進行していると言える。
|
Strategy for Future Research Activity |
H28年度においては、大口径配管における流速分布計測試験を実施する。すでにレイノルズ数が1,000,000までの試験を実施し、カルマン定数等の普遍性が300,000以上のレイノルズ数において観測されるという結果を得ているが、これを確定させるために、10,000,000オーダーの高いレイノルズ数における実験を実施する。実験結果は小口径の配管における結果と比較するとともに、Superpipeとの結果の比較を詳細に行うことを計画している。さらに、このような高レイノルズ数においては、さらなる計測の空間分解能の向上または補正方法の高精度化が求められる。そのため、LDV計測における空間分解能の向上とともに、高レイノルズ数域における流速の補正方法の確立を目指す。
|
Research Products
(5 results)