2015 Fiscal Year Annual Research Report
静電場・超音波ハイブリット浮遊法を用いた非接触無容器プロセス制御技術の開発
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15H03925
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
阿部 豊 筑波大学, システム情報系, 教授 (10241720)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北畑 裕之 千葉大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (20378532)
西成 活裕 東京大学, 先端科学技術研究センター, 教授 (40272083)
金子 暁子 筑波大学, システム情報系, 准教授 (40396940)
渡辺 正 福井大学, 附属国際原子力工学研究所, 教授 (50391355)
金川 哲也 筑波大学, システム情報系, 助教 (80726307)
松本 聡 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 主任研究員 (90360718)
長谷川 浩司 工学院大学, 工学部, 助教 (90647918)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 音場浮遊 / 静電浮遊 / 無容器プロセッシング / 非接触マニピュレーション / 液滴 / 宇宙環境 / 非線形 |
Outline of Annual Research Achievements |
異なる流体を混合・撹拌し、濃縮・反応・相分離させた後に、混合流体を蒸発・乾燥させるなどのプロセスは、創薬などの医学バイオ分野ならびに化学分析分野などにおいて不可欠のものである。しかしながら、超高純度の微量成分を取り扱おうとする場合、反応や相分離のために用いる溶媒の容器壁への付着や不純物の残留の問題が顕在化しており、容器を必要としない非接触での熱流体プロセス制御技術の実現が切望されている。本研究では、静電場・超音波ハイブリット浮遊法を用いた非接触無容器プロセス制御技術を開発することを目的とする。今年度は、浮遊制御システムの設計製作を行い、静電浮遊ならびに超音波浮遊による液滴浮遊特性を把握するための実験的知見を収集した。 液滴の非接触マニピュレーションを実現するために、超音波フェーズドアレイを用いた音響浮遊システムを開発した。超音波フェーズドアレイを用いて発生させた集束超音波の進行波を反射板で反射させることで、反射板付近に局所的な定在波を形成する。この定在波の節の位置に液滴を配置し、液滴を音響放射力により空中に浮遊させることに成功した。さらに、集束超音波の焦点位置を水平方向に移動させることで、定在波の移動を追従するようにして定在波中に捕捉された液滴を移動させることができた。また、音波の収束点を高速で切り替えることにより2つの焦点を形成し、複数の液滴を同時に浮遊させることに成功した。また、形成した2つの焦点を近付けることにより、複数液滴を同時にマニピュレーションして合体させることに成功した。静電浮遊法と組み合わせるための準備として、液滴の帯電および外部電界が、液滴の形状と合体挙動に与える影響を調べたところ、静電気力は本実験体系での液滴の合体挙動へ与える影響は無視できるほど小さいことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
音場浮遊法において、揮発性の有無による流動構造の比較を行った結果、飽和蒸気圧が高くなるに従って界面近傍に生じる循環渦の大きさは小さくなり、液滴の上下方向へ流出する外部流動は、水平方向に流出する流れに遷移した。内部流動は飽和蒸気圧が高くなるにつれて、剛体回転に近い流れ、トロイダル状の渦を伴う流れ、3次元的な流れを含む複雑流へと遷移した。このように、浮遊液滴の流体の飽和蒸気圧によって浮遊液滴内・外部流動の構造が遷移することが明らかとなった。また、マッハツェンダー干渉計によるデジタルホログラフィシステムを導入し、干渉縞の画像処理手法を構築することで、非接触密度分布計測を実現した。その結果、飽和蒸気圧が高い液滴を浮遊させた場合において、周囲気相濃度が高くなっていることが明らかとなった。また、ストークス層の厚さは周囲濃度の影響を受けて変化することから、ストークス層の存在が液滴内・外部の流動構造に影響を与えていることが示された。 静電浮遊法において、回転座標系における回転する液滴の運動量保存式から粘性係数測定式を再構築することで測定式を修正すると共に、液滴の回転分裂実験により液滴形状の詳細計測と内部流動の可視化を行い、測定式の適用可能範囲を検討することで、粘性係数測の測定誤差を10 [%] 以下まで減少させることに成功した。また、振幅変調させた集束超音波で浮遊液滴に高次のモード振動を誘起することにより、液滴の表面張力を20 % 以下の精度で測定することができた。 以上の実験的知見は、工学的・工業的に新たなブレイクスルーをもたらす可能性のある独創的で新しい非接触熱流体プロセス技術へと繋がるものである。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度以降においては、平成27年度に試作した液滴浮遊制御システムを用いて、蒸発挙動と内外部流動が共存する浮遊液滴の並進運動特性ならびに界面輸送特性を明らかにするとともに、その挙動を評価するための手法を構築する。さらに、試作装置の最適化を行い、多成分液滴の合体・撹拌・混合・分離・捕集などのプロセス制御を実現するための基礎技術を確立する。 静電浮遊法においては、多成分流体の液滴の回転による変形・分裂挙動に関する研究はこれまで例がない。この結果を基に、多成分流体の液滴を静電浮遊法により浮遊させ、回転による変形・分裂挙動および内部流動挙動を可視化観測するとともに、粒子イメージ流速計測法 (PIV)による内部流動場の計測を行う。 超音波浮遊法においては、超音波浮遊液滴に生じる非線形でダイナミックな液滴内外部の流動が、浮遊液滴界面からの蒸発挙動にどう影響するか実験結果と解析の統合を行う。液滴からの蒸発などの相変化過程には、浮遊液滴内外部の流動が強く影響することが想定されることから、浮遊技術を用いた熱流体プロセスの確立のために必要不可欠な液滴の蒸発挙動と内外部流動の相関に関する実験情報を、3次元マイクロPIVを用いて計測する。また、レーザーホログラフィ法を用いることによって、今まで計測されていなかった浮遊液滴界面近傍の境界層での温度分布の計測を可能とする。更には、音場浮遊液滴に生じる非線形でダイナミックな内外部流動や界面変形が、相変化過程にある浮遊液滴の蒸発から凝固に至る過程に与える影響について、定量評価する手法を構築する。 最終的には、浮遊液滴制御によって、異なる液体を混合・撹拌し、濃縮・反応・相分離させた後に、混合流体を蒸発・乾燥させるなどのプロセスを実現するために必要な科学的・技術的知見を集約する。
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Research Products
(13 results)
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[Journal Article] Oscillation of a rotating levitated droplet: Analysis with a mechanical model2015
Author(s)
Hiroyuki Kitahata, Rui Tanaka, Yuki Koyano, Satoshi Matsumoto, Katsuhiro Nishinari, Tadashi Watanabe, Koji Hasegawa, Tetsuya Kanagawa, Akiko Kaneko, and Yutaka Abe
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Journal Title
Physical Review E - Statistical, Nonlinear, and Soft Matter Physics
Volume: 92
Pages: 1-8
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
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